冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい

 ホテルのスイートルームにて。
 美桜は恭司のことを見上げながら自身の想いを伝えた。

「猫、嫌いなんじゃなかったんですか?」

 恭司は少しだけ目を見張った。

「嫌いじゃない……そうだな、羨んでるんだよ」

「羨ましいんですか?」

「ああ、そうだ。たまには気まぐれな猫を愛でるのも悪くはないと思ってな」

 彼の手が彼女の顎に添えられた。
 そう思った時には……。

「ん……」

 彼から再び唇を奪われてしまい、頭の芯がぼうっとしてくる。

(私、会ってそんなに立ってない男の人と何回もキスしてる……)

 そんなことを考えていたら、そっと彼の唇が離れた。

「あ……」

「嫌なら、ここで止めにするか?」

 ドクンドクンドクン。
 心臓がおかしな音を立てている。

「私は……」

 恭司は女性には困っていない雰囲気の男性だ。
 だから、ここで断ったとしても、無理やり身体を暴かれたりすることにはならないだろう。
 ゴクリ。
 美桜は唾を飲み込んだ。

(恭司さんとは、出会ってまだ数時間しか経っていない)

 普段の自分であれば、絶対に彼の誘いに乗ったりしなかっただろう。
 だけど、酒の勢いもあってか、いつもよりも気持ちが解放的になっていた。

(私は……)

 恭司との出会いから今に至るまでの流れを思い返す。
 気付いてしまった。
 出会ったばかりなのに、どうしようもなく、この男性に惹かれてしまっている。

(こんなに綺麗な男の人。ううん、綺麗だから、この人に惹かれているわけじゃない。最初は、橋の上で泣いていて放っておけないって思ったんだけど、すごく優しくて、ちゃんと自分の考えを持った大人の男性で、すごく素敵だなって思うようになった)

 そう、見た目以上に、彼の内面に惹かれていっているのだ。

(……この機会を逃したら、もう絶対に一緒に夜を共にすることなんてあり得ない)

 これまで男性から告白されたことは何度かあってが、親の監視が厳しくて交際したことだってないし、きっとこれから先もこんな風に自由に異性と触れ合う機会にはあまり恵まれない可能性がある。
 酒の勢いも借りて――普段とは違って大胆な発言を口にすることが出来た。

「止めないで欲しいです」

 恭司が口の端をゆるりと吊り上げた。

「だったら、お言葉に甘えて、拾った猫を愛でさせてもらうとするか」

 熱情を孕んだ眼差しに射抜かれると、獣に囚われた小動物――それこそ猫にでもなったかのような心地がする。

「あ……」

 恭司の指が美桜の鎖骨を左右になぞると、彼女の衣服をゆっくりと脱がせはじめる。

 美桜の心臓がドキドキしてくる。
 ずっと親の言うことを聞いてきたせいもあって、男性と交際したことなどない。漠然と、父親が決めた相手とお見合いをして結婚するのかなと思って過ごしてきた。だけど、今、出会ったばかりの男性と両親には絶対に話せないような行為に及んでいる。
 熱に浮かされているせいもあるかもしれない。
 だけど……。

(もう私も大人だもの、誰に身体を預けるかは自分で決める)

 改めて決意を固める。
 とはいえ、男性にこんな風にされるのは初めてだから、緊張してドキドキしてしまった。きゅっと身体を縮まらせていると、彼の手が下着を脱がせてこようとした、その時。

「俺もだいぶ暑くなってきたな」