冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい


「まあ。嫌がらせに遭ってる時の人間ってのは、割と視野(しや)が狭くなるもんだからな」
 
 恭司はどこか遠くを見つめていた。

(なんだろう? 恭司さんも私みたいな経験があるのかな?)

 美桜の頭の上、大きな掌が乗ると、まるで猫よろしく撫でられてしまっていた。

「きゃっ、何をするんですか」

 最初は戸惑ったけれども、なんだか相手の手がこちらを慈しんでくるみたいで、なんだか悪い気はしなかった。

「一人でよく頑張ったな」

 ――よく頑張ったな。
 そんな風に誰かに……。
 美桜の瞳から涙が(あふ)れてくる。
 恭司がぎょっと目を()いていた。立ち上がると、美桜の隣に移動してくる。
 距離が一気に近くなって、心臓がドキドキしてきた。
 彼がこちらを心配そうに覗き込んでくる。

「なんだ、おかしなことを言ったか?」

「ふふ。貴方、私よりもだいぶ大きな男の人なのに、慌てていて、おかしい」

 笑っていたら、なんだか気分が良くなってきた。
 ほろ酔い気分だ。

「なんだか笑ったり泣いたり、変わった女だな」

 笑い泣きしながら、そっと自身の涙を拭った。

「恭司さん、そんな風に優しいことが言えるのは、貴方もきっと色々大変なことを乗り越えてこられたからなんでしょうね。初めて貴方みたいな物の見方をする男の人に出会いました」

 すると、恭司の瞳が(せわ)しなく揺れ動く。

「俺に対して、そんな言い回しをしてくる女は、俺も初めて出会ったよ」

 まるで猫の毛を(つくろ)うかのように、彼から優しい手つきで撫でられていると、なんだかトロンと夢見心地に(とろ)けてきてしまった。

「ふふ、くすぐったい」

 なんだかくすぐったくて気持ちが良かった。

「恭司さんの言葉に救われました。もしも何かお困りごとがあったら、私に何なりとお尋ねくださいね」

 すると。恭司が不敵に微笑んだ。

「だったら、遊び慣れてない女の口説き方がよく分かってないんだ。教えてくれないか?」

 ドクン。
 気付いたら、相手の顔がすごく近くにあってドキドキが落ち着かなくなっていく。

「恭司さん、好きな女の人を口説くんですか?」