冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい



「そんな猫の世話なんざしなくたって良いだろう。別に獣医に見せなくても、かすり傷だ」

「ダメです」

 美桜はキッパリと言い切ると、何枚か持ってきていた清潔なハンカチのうち一枚を取り出して、そっと巻いてやった。

「よし、これで良し! 痛くない? そう、良かった。無茶はしないでね。あ!」

 手当をされた途端、黒猫はひょいと窓の外へと姿を消した。どうやら近くに木があって、そちらに飛び乗って行ったようだ。

「やっぱり、ほら、気まぐれなんだよ。猫なんてな」

「そんなところが可愛いんじゃないですか」

「俺はもっと自分に従順なやつが良い。気まぐれなだけの奴は、何をしでかすか分からないからな」

「そうでしょうか?」

「……ほら、気を取り直して飲むぞ」

 恭司が近くのソファに座り込む。手慣れた手つきで赤ワインのコルクを開けると、グラスに注いでくれる。
 バーテンダーの店員でもやっていたことがあるのだろうか?
 優美な手つきで汲み終わると、テーブルを挟んで反対側に座った美桜へと、グラスをそっと差し出してくる。

「ほら、飲めよ」

「ありがとうございます」

 普段はあまりアルコールは呑まない方なのだが、なんだか今日は思い切ってたくさん飲んでみたい気がした。酔っているからなのかもしれない。美桜はグラスにそっと口をつける。慣れないお酒なのもあって、喉がやけに熱く感じたものの、彼の言った通り、スッキリした味わいで上品だ。

「わあ、これ、すごく美味しいです。なんだろう、ちょっぴり大人の味だけど」

「ああ、良い感じに渋さが増してるだろう?」

「はい。お酒の良し悪しは分かりませんが、これはすごく好きです」

「そうか。それは良かったな」

 恭司がまるで少年のように屈託なく笑いかけてくる。

(あ……)

 意地の悪い笑顔ばかり見ていたせいか、なんだか胸が疼いてドキドキしはじめる。

(この人、すごくカッコイイから)

 見た目で人を判断してはダメだと両親の言いつけがある。それはそれでその通りだと思うのだが、そんなことがどこかに吹き飛んでしまいそうなぐらい、恭司と名乗る美青年の容姿は日本人離れしていた。

(こんなカッコイイ人と喋ることなんて全然ないせいで……ちょっとのぼせちゃっているのかも)

 ちょっとしたことでもドキドキしてしまう。