高級ホテルのスイートルームの窓辺にて。
美桜は恭司に掛けられた言葉を反芻していた。
『愛してる、美桜』
美桜は恭司から着物を脱がされていた。桜色の振袖を両肩から滑り落とされると、パサリと音が鳴る。
これまでにも何度も身体を重ねてきたはずなのに――美桜はいつになく身体が火照ってしまっていた。
(恭司さんから愛してるって言われたから……?)
なんだか幸せで、室内の綺麗な内装も相まって、夢見心地だった。
彼の両手が彼女の両肩にかかる。
すると。
恭司が美桜の耳元で囁いてくる。
「それで? あんたはどうだ?」
背後にいる恭司が顔を覗かせてきていたため、美桜は見上げた。
「私がどうしたんですか?」
恭司が盛大な溜息を吐く。
「こんな時までとぼけるなよ。あんたが俺のことをどう思っているかだよ」
美桜は目を真ん丸に見開いた。瞳が忙しなく揺れ動く。
「それは……その……」
改めて自分の気持ちを伝えるとなると気恥ずかしい。
「あのメモのすみっこにちっさな字で書いてただろう?」
「え? 何を?」
「誤魔化すなって。ちゃんと俺は返事しただろう? あそこに書いてたことを俺に口頭で伝えるだけで良い」
美桜は恥ずかしくてもじもじしてしまった。
「その……」
「なんだよ? 早く聞かせてほしいんだがな」
恭司がやけにせっついてくる。
美桜は思い切って答えることにした。
けれども、どうしようもなく緊張して時間がかかる。
ドキドキ心臓が高鳴ってきた。
そうして、瞳を忙しなく揺らしながら、桜色の唇を開いた。
「好き、です」
すると、恭司がどうしてだかそっぽを向いた。
身長が高いし逆光のせいで表情が見えなくなってしまう。
「恭司さん……? むぎゅっ……!」
美桜は顔を前に向けさせられた。
「今の俺の顔は見るな」
しかしながら、人の心理として「見るな」と言われたら見たくなってしまう。
「どうして……ですか? ……っ」
美桜は振り仰ぐとハッと息を呑んだ。
(恭司さん……顔が真っ赤だ)
なんだか見ている美桜まで赤面してしまった。
「見るなって言っただろう? 言うこと聞かない悪い猫には仕置だな」
「え? ひゃっ……!」
美桜は肩口を恭司に甘噛みされてしまった。
唇が離れた後、恭司が少しだけ口惜しそうに告げてくる。


