テーブル席に誘導されると、美味しそうな食べ物たちを食することになった。
白いテーブルウェアの上に並べられるのは、極上の味たちだ。
レンズ豆のスープには大胆にソーセージが丸々一本入っていて、驚かされてしまった。赤ワインと酢で煮込んである牛シチューの芳醇な香りとコクのある味で満足感がすごく高い。白身魚のムニエルは上品で軽やかな味わいだ。デザートにはハイデルベルク定番のメダル型のチョコも食べれて、うっとり夢見心地になった。
「月並みな表現だけど、ほっぺが蕩けそうです!」
「ああ、気に入ってくれたみたいで何よりだ」
食事を終えた後、なで肩の瓶に入ったワインが運び込まれる。
ワインに詳しくはないが、色で白ワインだと分かる。
美青年が優雅な手つきで手に取ると、ワイングラスを口につけた。
「ライン川の方で出来た結構良いワインなんだぜ。すっきり飲みやすいはずだ。ほら、良かったら飲めよ」
普段は絶対に呑まないのだが、思い切って口にすることにした。
少しだけ酸っぱいが爽やかな味わいで、あまりお酒に強くない自分でも美味しく飲める。
「わあ、美味しいです!」
なんとなく頭の中がふわふわして気持ちが良い。
これまでの嫌なことも全部忘れてしまいそうだ。
「あんた、見た目通り、酒にあんまり強くなさそうだな。悪い。飲ませて。ほら、せっかくだから、部屋まで連れて行ってやるよ」
そうして、お姫様抱っこされると、最上階の奥にある部屋へと連れて行かれる。
連れてこられて、美桜は愕然とした。
(ここって、スイートルームってやつじゃ……?)
思わずキョロキョロと見回してしまった。
豪奢な内装の部屋の中央にはキングサイズのベッドが供えつけられていた、白くて清潔なリネンの上に横たわったら気持ちが良さそうだ。
もっと手前にある二人がけのソファにゆっくりと下ろされる。麻素材で気持ちが良かった。
「ありがとうございます」
「まあ、気にするな。良い部屋が空いていたんだ。今日だけだから、満喫しておけよ」
「本当にお金は良いんですか?」
「ああ、もちろんだ。その代わり、良かったら、日本でこのホテルの宣伝をしてくれよ。若い女性達からの口コミは大事だからな」
「貴方、お友達思いなんですね」
「お友達思い? なんで?」
「え? だって、ご友人の商売がうまくいきますようにって、お願いされているんでしょう? わざわざお願いしてくるなんて、優しいなって。ちょっと怖い顔の男の人だなって思いこんでしまっていました」
美桜がふんわり笑顔で答えたのだが、美青年からの反応がない。
そこでハッとする。
(初対面の人に向かって、ものすごく失礼な発言だったかもしれない)
思い至ったが、時すでに遅し。
言葉を放った後に、慌てて否定をはじめた。
「ごめんなさい、悪気があったわけじゃなかったんです、ぶっきらぼうというか、不良なのかなって最初は思っちゃったんですけど、本当は優しいんだなって思って」


