冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい


 外国の男性に追いかけられていたところを――橋で出会った日本出身の美青年に助けられた。
 美桜の心臓は、全力疾走した後すぐでもあるので、なかなか鳴りやんではくれない。
 美桜(みお)がお礼を言おうと口を開こうとした、その時。

「おいおい、さっき俺がホテルでちゃんと寝ろって言ったばっかりだっただろう? なんですぐにホテルを飛び出て、外国人と追いかけっこなんかしてるんだよ?」

 美青年から呆れた調子で声をかけられてしまい、美桜は自身の愚行を思い出して恥ずかしくなってしまった。

「それは……」

「何だよ、何か理由があるのか? 夜景が観たかったとかなら、さすがの俺も驚くぞ」

 美青年がハアッと盛大な溜息(ためいき)を吐く。そんな姿も美形ゆえに様になっている。

「実は……ホテルのチェックインの日付を間違ってしまっていたんです」

「……はあ?」

 美青年が呆れたように口を開けていた。
 美桜はシュンと項垂れてしまう。
 普段からゆっくり時間をかけて慎重に物事を進めるタイプなのに、今回の海外旅行は普段とは違って勢いに任せたところがあったので、こんなミスをしてしまったのかもしれない。
 落ち込んでいたら、美青年が声をかけてきた。

「そんな理由で夜のドイツを走り回ってたとか、やっぱり小さな黒猫みたいだな」

「小さな黒猫?」

「ああ。そうだ。予測のつかない行動を取るあたりなんかな。まあ、俺も疲れてたら判断能力が鈍ることもある。誰かに迷惑かけたわけでもない」

「ですが、今まさに、貴方にこんな風に迷惑をおかけしてしまっています」

「別に俺は迷惑かけられたとは思ってない。気にするなよ」

 美桜はそこでハッとする。
 猫よろしく美青年に抱きかかえられていることに気付いて、頬がかあっと熱くなっていく。

「ごめんなさい、降ろしてくださいませんか?」

「ああ、悪かった、子どもみたいに軽いから気付かなかったよ。旅行中、こんな風に攫われないように気をつけておけよ」

 子どもみたいと言われて、童顔(どうがん)コンプレックスを刺激された気がして、なんだか気恥ずかしかった。
 とりあえず解放されると、地面に降り立った。今の今まで気づかなかったが、この美青年に助けられていなかったら、どんな目に遭っていたのだろうかと想像したら、足ががくがく震えてきた。
 すると、彼からぐいっと腕を引き寄せられて、なんとか地面に倒れ込まずに済んだ。

「あんた、迂闊で放っておけないな」

「え?」