月曜日、早朝。
まだ薄暗い公園を美桜は散歩に出てきていた。
どうしても黒猫ミオが外に出たいと朝から騒いでいたからだ。
「うう、ミオちゃん、寒いね」
「みゃう!」
美桜に抱っこされて、ミオはぬくぬくしており気持ちが良さそうだった。
(外に出なくても良かったような……?)
そんなことを思いながら歩く。
吐く息は白くて、とにかく寒い。
とはいえ、ミオを抱っこしているので、身体の中央はポカポカして温かかった。
「恭司さん、今日は帰ってくるのかな?」
結局、昨日は恭司のマンションに泊らせてもらったのだが、家の主が帰ってくることはなかった。
「たくさんの会社を経営している人は多忙なんだなあ」
そんな人物が、先週と今週、わざわざ土日に時間を作ってくれたこと自体が有難い。
(それにしても、恭司さんがすごく優しいから勘違いしそう)
帰ってきたら、恭司がどんな形で美桜の世話を見ようとしてくれているのか尋ねるのだ。
「ミオちゃん、頑張るから、私のことを応援してね」
「みゃう?」
ミオが不思議そうに首を傾げていた。
ふと。
前方のベンチに見知った人物が腰かけているのが見えた。
「あの人……あ、ミオちゃん!」
相手の姿を見るなり、ミオがはしゃいで美桜の腕の中を飛び出していく。
「おお、タマやないか。久しぶり」
先日公園で出会った和装の老人だった。
黒猫ミオのことをタマと呼んでいた人物だ。
ミオを抱き抱えているのだが、なんとなく違和感を覚える。
「こんにちは。あれ? どうなさったんですか?」
着物の袖下部分が裂けてしまっている。
美桜の視線を感じたのか、老人が返事をしてくれた。
「野良猫が飛び掛かってきてな。破かれたんや。寒いけど、修繕は呉服店に頼むから気にせんといて」
「そうだったんですね。ええっと、寒いのなら、少々お待ちを」
美桜はポシェットバッグからミニ裁縫セットを取り出すと、ご老人の隣に座った。
「お、お嬢ちゃん、おもろいもの持ってるな」
「お着物だから、呉服店でなおしてもらった方が良いとは思うのですが、寒いので少しだけでも隙間を防ぐように」
美桜は針に糸を通すと、老人の着物の袖口をさっと糸で縫って応急処置をはじめる。
「あんた、器用やね」
「ありがとうございます。余計なことをしてしまったんじゃなかったら良かったです」
「おおきに。前から優しい娘さんやと思ってたけど、ほんまに優しいわ」
老人が機嫌よくしていた。
「前から?」


