最後の嘘は、愛だった



「……海外で手術を受けることにしたの」

美華の言葉に、俺は息を止めた。

「手術……?」

「うん。でも、その手術が成功する確率は極めて低いの」

「……なら、なんで」

声が震えた。

「なんで尚更、都薇は俺に教えてくれなかったんだよ」

美華は俯いた。

「……言えなかったんだよ」

「……え?」

「あの子、言ってたの」

美華は、都薇の言葉を思い出すようにゆっくり話した。

「『蓮に言ったら、絶対に待ってるって言うから』って」

「……」

「『だから言えない』って」

胸が締め付けられる。

「成功する確率が低いってことは……失敗する確率の方が高い」

美華の声が震えた。

「帰ってこられる保証もないのに、約束なんかできないって」

「……」

「蓮を待たせたくない。帰ってこられなかったら、蓮をずっと苦しませることになるからって……」

俺は何も言えなかった。

都薇が俺に言った言葉が、頭の中を何度も駆け巡る。

――好きな人ができた。

あれは、嘘だった。

俺を嫌いになったわけじゃなかった。

俺と離れたかったわけでもなかった。

俺を苦しませたくなくて、自分から俺の前から消えた。

「……馬鹿だろ」

思わず呟いた。

「……蓮?」

「そんなこと……一人で決めるなよ」

拳を握りしめる。

「帰ってこられるかどうかなんて、そんなの……一緒に待てばいいだろ」

声が震える。

「俺は……待つって言ったのに」

美華は何も言わなかった。

俺は俯いた。

「……都薇の馬鹿」

涙が頬を伝った。

「俺は、お前が帰ってくるかどうかじゃなくて……お前と一緒にいたかったんだよ」