最後の嘘は、愛だった

都薇が学校を辞めてから、一週間。

俺は未だに、あいつのいない教室に慣れなかった。

隣の席を見る。

そこに都薇はいない。

机の中も、ロッカーも、全部空っぽだった。

「……なんでだよ」

別れた理由なら、聞いている。

――好きな人ができた。

それだけ。

でも、俺にはどうしても納得できなかった。

都薇は、そんな簡単に俺を好きじゃなくなるような奴じゃない。

……そう思いたかった。

「美華」

放課後、俺は都薇の親友だった美華を呼び止めた。

「蓮……?」

「都薇のことで聞きたいことがある」

美華の顔が一瞬だけ強張った。

「……何?」

「都薇って、なんで学校辞めたんだ?」

「……」

美華は答えない。

「俺と別れたことと関係ある?」

「……あると思う」

「じゃあ、なんで?」

「それは……」

美華が言葉を濁す。

「都薇が好きな人できたって言ったから、俺もそれ以上聞かなかった」

「……」

「でもさ」

俺は拳を握った。

「好きな人ができたからって、学校まで辞めるか?」

美華は俯いた。

「……都薇は、蓮に何か言ってなかった?」

「何も」

「本当に?」

「何も言ってない」

しばらく沈黙が続いた。

「……美華」

「……」

「何か知ってるんだろ?」

美華の肩がわずかに揺れた。

「都薇に聞かれたの。蓮には絶対に言わないでって」

「何を?」

「……それは言えない」

「頼む」

「ごめん」

「俺、都薇に何かしたのか?」

「違う!」

美華が思わず声を上げた。

俺は驚いて美華を見る。

「……違うって?」

美華は何かを言いかけて、口を閉じた。

「蓮のせいじゃない」

「じゃあ、なんでだよ」

「……」

「俺には何も言わずに別れて、学校まで辞めて……それで俺が何も考えずにいられると思う?」

美華は悲しそうに俺を見る。

「……都薇は、蓮のことが嫌いになったわけじゃないよ」

「……え?」

「それだけは、信じてあげて」

その言葉を最後に、美華は教室を出ていった。

俺は一人、都薇の空っぽの席を見つめる。

「……じゃあ、なんで」

答えは返ってこない。

ただ、窓から入ってきた風が、都薇の机の上に残っていた小さな消しゴムを床へ落とした。

俺はそれを拾い上げる。

そして、強く握りしめた。

――都薇。

お前、一体何を隠してるんだよ