最後の嘘は、愛だった

次の日の放課後。
いつもの場所で、蓮と向かい合っていた。
「……話って何?」
「……蓮」
名前を呼んだだけで、胸が苦しくなる。
今日、この人と別れる。
そう決めたはずなのに、目の前にいる蓮を見ると、その決意が揺らいでしまう。
「私……好きな人ができたの」
「……え?」
蓮の表情が止まった。
「だから……別れてほしい」
「待って。急にどうしたんだよ」
「急じゃないよ」
嘘。
本当は、病気を知ったあの日からずっと考えていた。
「その人のことが好きなの?」
「……うん」
また嘘をつく。
「俺より?」
「……うん」
言葉にするたび、胸が痛い。
「そっか……」
蓮は俯いた。
「いつから?」
「……最近」
「俺のこと、もう好きじゃない?」
「……うん」
本当は違う。
今でも好き。
大好き。
誰よりも。
「……分かった」
蓮がそう言って立ち上がる。
その瞬間、思わず手を伸ばしそうになった。
「蓮……!」
でも、手を握りしめて止めた。
ここで引き止めたら駄目。
私は蓮を幸せにするために、離れるんだから。
「……じゃあな、都薇」
「……うん」
蓮が背を向ける。
その背中が遠ざかっていく。
もう二度と、私の隣に戻ってこないかもしれない。
そう思った瞬間――
「……っ」
涙が一粒、頬を伝った。
「ごめん……蓮」
聞こえないように呟く。
「本当は……大好きだよ」
でも、蓮はもう振り返らなかった。
私はその場に一人残された。
そして、蓮の姿が完全に見えなくなった瞬間。
「……ごめん、ごめんね……」
私はその場にしゃがみ込み、声を押し殺して泣いた。