最後の嘘は、愛だった


本屋を出てから、私たちは並んで駅へ向かっていた。
蓮は買ったばかりの小説を大事そうに抱えている私を見て、少しだけ笑った。
「そんなに嬉しい?」
「うん。だってずっと読みたかったんだもん」
「じゃあ、帰ったらずっと読んでそうだな」
「……たぶん」
そんな他愛のない会話をしながら歩く。
ただ、それだけなのに。
私は、この時間がずっと続けばいいのにと思っていた。
「都薇?」
「ん?」
「歩くの、ちょっと遅くない?」
「え?」
気づけば、蓮との距離が少しだけ開いていた。
「……ごめん。ちょっとぼーっとしてた」
そう言って笑うと、蓮は何も言わずに私の歩幅に合わせてくれた。
「蓮?」
「ん?」
「……ありがと」
「何が?」
「なんとなく」
蓮は不思議そうに首を傾げた。
私はそんな蓮を見ながら、そっと笑った。
――こういう何気ない時間を、もっと覚えておきたい。
いつか、私がいなくなったあとも。
そう思った瞬間、胸の奥がきゅっと痛んだ。