最後の嘘は、愛だった

放課後。

「都薇、行くぞ」

「うん!」

教室の前で待っていた蓮と合流して、私たちは駅前の本屋へ向かった。

「これこれ!」

私は目的の小説を見つけると、嬉しくなって本を手に取った。

「そんなに欲しかったの?」

「うん。ずっと気になってたの」

「じゃあ買えば?」

「でも今月ちょっとお金が……」

「じゃあ俺が買う」

「え、いいよ!」

「いいから」

「でも――」

「都薇」

蓮が少しだけ真剣な顔をする。

「俺が買いたいの」

「……じゃあ、お言葉に甘えます」

「最初からそうしろ」

そう言って、蓮は笑った。

本屋を出たところで、私はふと足を止めた。

「……っ」

胸が苦しい。

ほんの少し歩いただけなのに、息が上がってしまった。

「都薇?」

「……え?」

振り返ると、蓮がこちらを見ていた。

「どうした?」

「なんでもないよ」

私は笑ってみせる。

「ちょっと暑かっただけ」

「……本当に?」

「うん。大丈夫」

蓮は納得していないようだったけど、それ以上は何も聞かなかった。

そして、少し歩いてから私の手を握る。

「疲れたなら言えよ」

「……うん」

「無理すんな」

「分かってるって」

笑いながら答えたけれど――

胸の奥では、別の言葉が浮かんでいた。

『無理しないで』なんて言われても。

私には、無理をするしかないんだよ。

だって私は――

蓮の隣にいられる時間を、少しでも長くしたいから。