―――ごめん。
冬弥は咲夏の耳元で、今にも泣き出しそうな、ひどく切ない声で謝った。
咲夏はその胸の中でゆっくりと小さく頭を振る。
けれど、冬弥は咲夏を二度と離さないようにさらに強く抱きしめながら、必死に言葉をまくしたてた。
「――言い訳になってしまうかもしれないけど…っ、絶対に誤解なんだ!安達さんが行ってすぐ、小山内さんが急に足元を狂わせて転びそうになってさ、だから俺、つい反射的に抱きとめただけなんだっ!
本当に、本当に信じてほしい、俺が好きなのはっ――!!」
そこまで言いかけた、彼の唇。
咲夏は冬弥の胸から少しだけ身体を離すと、恥ずかしさも、臆病な理性も、すべてを真夏の夜風に投げ捨てて、真っ直ぐに手を伸ばした。
――そっと、冬弥の端正な顔を、自分の両手のひらで包み込む。
冬弥が驚いて目を見開いた、その瞬間。
咲夏は少しだけ背伸びをして、彼の言葉を塞ぐようにして、優しく、その唇にキスをした。
ドンッ――、パラパラパラ……。
ふたりの世界が完全に重なり合ったその瞬間、夜空の向こうで、お祭りのフィナーレを告げる特大の大輪の花火が、凄まじい音と共に美しく弾けた。
色鮮やかな七色の光が、雨上がりの虹のように、初夏の夜の竹林のように、ふたりの浴衣姿を色鮮やかに、ドラマチックに照らし出していく。
「……っ」
唇が離れたとき、冬弥は完全に顔を真っ赤に染め上げ、信じられないものを見たように固まっていた。
いつもは学校一の爽やか王子として周りを引っ張る彼が、今度は咲夏の情熱的な仕草によって、完全に骨抜きにされていた。



