ショッピングモールで清楚系の浴衣を無事に買い終え、ほくほくとした気分のまま帰宅した、その日の夜のこと。
自分の部屋で当日の髪型はどうしようかと鏡の前で悩んでいた咲夏のスマホが、ポケットのなかで『ピコン』と短い通知音を鳴らした。
(あれ、誰だろう?知華かな、それとも……冬弥くん?)
胸を期待に弾ませながら画面を開いた咲夏は、そこに表示された予想外の送り主の名前に、思わずパチクリと目を丸くした。
【 メッセージの送り主:佐藤怜 】
そこにあったのは、いつも通りのひどくぶっきらぼうな文字列だった。
『今週末、駅前で祭りあるから来いよ。俺が手伝うことになった焼きそばの屋台、まじで美味いから。絶対に来い』
そんな強引な誘い文句のすぐ下には、文字の冷たさを誤魔化すように、どこか不貞腐れた顔をした可愛い黒猫のスタンプがポツンと一つ添えられていた。
「ふふっ……、なによこれ。佐藤くんってば、本当は私のこと、凄く誘いたかったりして…?」
咲夏は液晶画面を見つめながら、クスリと楽しそうな笑みをこぼした。
あの体育祭以来、怜はすっかり、咲夏にとって「冬弥のことで何でも言い合える、口は悪いけれど最高に頼もしい共犯者」になりつつあった。
可愛い黒猫のスタンプを選ぶ彼の意外なギャップに心が温かくなりながら、咲夏は弾むような指先で返信の文字を打ち込んでいく。
『佐藤くん、お誘いありがとう!実はね、今週末の夏祭り、冬弥くんと一緒に回ることになったの!だから当日は、冬弥くんと一緒に佐藤くんの屋台に焼きそば食べに行くね!』
送信ボタンを押し、ベッドの上にコロンと寝転がって画面を見つめる。
すると、いつもならなかなか既読がつかない怜から、珍しいほどの猛スピードで返信が返ってきた。
『……そーかよ。だったら当日、せいぜい頑張れよ、めでてーギャル』
ぶっきらぼうな文字列のなかに滲む、彼なりの不器用で、けれど確かな優しい応援のメッセージ。
「ありがとう、佐藤くん……」
咲夏はスマホを画面が消えるまで見つめ、それからそっと、自分の愛おしい宝物を扱うかのように胸元へとぎゅっと抱きしめた。
そのまま、ひんやりとしたベッドのシーツの上に仰向けになって横たわる。
冬弥からの、二人きりで回ろうという特別なお誘い。
そして冬弥の親友の怜が、裏からそっと背中を押してくれるこの心強さ。
(あぁ……私、本当に今週末、冬弥くんと『デート』に行くんだなぁ……)
天井を見つめる咲夏の瞳が、真夏の夜の星空のようにきらきらと熱く輝き出す。
清楚系の浴衣で彼を驚かせる特別な真夏の夜に向けて、咲夏の心臓は、まだ見ぬお祭りの花火の音のように、トクン、トクンと、甘く激しい音色をいつまでも刻み続けているのだった。



