夏と冬が重なれば。【完結】


「しかも、あの朔先輩の方から告白してくるなんて本当に凄いよね……!やっぱり知華が毎日、一生懸命に自分を磨いて、可愛いギャルになって真っ直ぐアタックしたから、先輩の胸をガッシリ掴んだんだねぇ」

 咲夏はベッドの上でクッションを抱きしめ、自分のことのように目をキラキラと輝かせて感心していた。

「そんなことないよ!でもね、自分の想いを誤魔化さないで、真っ直ぐに毎日伝えるって、本当に大切なことなんだなって思ったの!!だから咲夏っちも、絶対に諦めないで!ね?」

 朔先輩の「本物の彼女」になった知華の言葉には、今の咲夏にとってこれ以上ないほどの圧倒的な説得力があった。

すると、座椅子でコーラを飲んでいた那智も、ふっと口元を和らげて会話に乗ってくる。

「そうだぞ。咲夏は、一途に冬弥だけを見て努力してきたところが最大の取り柄だからな。もっと自分に自信持てよ」

「ありがとう、二人ともぉ~~~っ……!」

 地味だった過去を知り、今の白ギャル姿になるまでの努力を一番近くで見ていてくれた親友ふたりの熱いエール。

咲夏は嬉しさのあまり、視界をじんわりと滲ませて泣きそうになっていた。

夜が更けるまで続いたガールズトークは、臆病になっていた咲夏の心に、もう一度前を向くための大きなブーストをかけてくれた。


 ――そして、その翌日のこと。

 咲夏は夏休みの気分転換を兼ねて、新しくオープンしたお洒落なショッピングモールへと買い物に出かけていた。

 トレンドの夏服を眺めながら、両手にいくつもの買い物袋を抱えて歩いていた、その時だった。

 スカートのポケットの中で、スマホが『ピコンッ』と短い通知音を鳴らす。

何気なく取り出して画面を見た瞬間、咲夏は驚きのあまり荷物を床にぶちまけそうになった。

【 LIMEの通知:冬弥くん 】

 夏休みが始まって以来、ずっと冷え切ったままだったトーク画面。

そこに、待ちに待った大好きな人からの新しい文字列が躍っていた。

『安達さん!久しぶり!毎日暑いけど元気にしてる?』

(とっ、冬弥くんから……っ!LIMEがきたぁあああ!!)

 文字面からすらも彼の爽やかさが溢れ出ているようで、咲夏は胸を激しく躍らせながら、文字が打ち間違えないように慎重に『元気だよ!冬弥くんも部活頑張ってね!』と返信を送った。

 画面を見つめ、既読がつくのをそわそわと待っていた、まさにその瞬間だった。

 ブー――ッ、ブー――ッ、ブー――ッ!!!

 突如として、画面が通話中の着信画面へと切り替わり、スマホが手のひらの中で激しく振動し始めた。

「きゃあっ!?おっとっと、と、電話あぁあッ!?!?!」

 完全に予想外のダイレクトなアプローチに、咲夏は悲鳴を上げてスマホをアクロバティックに空中でお手玉し、危ういところでキャッチした。

 心臓が口から飛び出しそうなほどの爆発的なビートを刻むなか、震える指先で通話ボタンをスライドさせ、耳元へとスマホを当てる。

『あ、もしもし安達さん?急に電話してごめんね!』

 スピーカー越しに、受話器のすぐ向こう側からダイレクトに響く、冬弥の少し低くて最高にかっこいい生の声。

「う、ううん!大丈夫だよっ!どうしたの、冬弥くん……っ?」

 緊張のあまり声が裏返りそうになるのを必死に抑える。

すると、冬弥は少しだけ照れくさそうに笑うような気配を電話の向こうで漂わせたあと、思い切ったように声を弾ませた。

『あのさ、今週末に駅前の広場で大きな夏祭りがあるんだけど……。もし良かったら、安達さんとふたりで行きたいな、と思って。……予定空いてたり、する?』

 夏祭りのお誘い。
しかも、みんなで、ではなく『ふたりで』。

 ショッピングモールの賑やかなBGMが、一瞬にして遠ざかっていく。

 知華がくれた「真っ直ぐ伝える大切さ」というアドバイスの直後に訪れた、神様からの特大のご褒美。

浴衣姿の冬弥とふたりきりで過ごす真夏の夜を想像した瞬間、咲夏の頭の中は完全に容量オーバーを起こし、真っ赤になった顔を両手で覆うようにして、ただただ胸のときめきに溺れそうになるのだった。