" 安達さんの良いところ……
怜には気づいて欲しくなかったんだ"
その甘く切ない言葉の余韻が、雨上がりの竹林にさらさらと心地よく溶けていく。
咲夏は顔から火が出るほどの熱を帯びながら、いまだに冬弥に握られたままの自分の右手を見つめて完全にフリーズしていた。
――ガサガサッ!
そのとき、静かな竹林の奥の藪から、激しい足音と共にお馴染みの賑やかな声が響き渡った。
「おーーーい!冬弥!安達さん!一体どこいってたんだよー!」
「咲夏っちーーーっ!心配したんだからねーーーっ!」
声の主は、知華、那智、そして新の3人だった。
先頭を走ってきた知華が、ふたりの姿を視界に捉えた瞬間、その大きな目をさらに丸くしてピキリと足を止める。
「あれ……?ちょっと、なにあれ……」
「お、おいおい。冬弥、お前しっかり手ぇ握ってんじゃん。王子やるねぇ」
知華がニヤニヤと口元を引きつらせ、後ろから追いついた新が「ひゅーっ!」と大袈裟に口笛を鳴らす。
那智にいたっては、くわえていたチュッパチャプスをじっと見つめながら「完全に事後だな」と不敵な笑みを浮かべていた。
「わ、わわわわっっっ!?」
親友たちの登場によって一気に現実に引き戻された咲夏は、パニックのあまり跳び上がり、慌てて冬弥の手をハプニングのように振り払った。
あまりの勢いに、冬弥は「あはは」と少し寂しそうに笑いながら、空いた自分の大きな手のひらを名残惜しそうにポケットにしまい込む。
「ごめんねみんな!通り雨がすごかったから、ちょっと雨宿りしてたんだよ」
冬弥は何食わぬ顔で爽やかに笑い、全員を安心させるように一歩前に出た。
「なんだよー、それならそうと連絡してよ!でも、怪我とかなくて良かった!」
「そうだよ咲夏、心配したんだからねっ(あとで特大の事情聴取ね)」
知華が咲夏に抱きつきながら、耳元で恐ろしい作戦会議の予告を囁いてくる。
咲夏は真っ赤な顔のまま「う、うん……ごめんね……っ」とペコペコ頭を下げるのが精一杯だった。
「じゃ、無事に全員揃ったことだし、次は嵐山のメインストリートでお土産でも見に行こーぜ!」
新がパンフレットを叩いて明るく先導し、5人の賑やかな班行動の日常へと一気に引き戻されていく。
知華に腕を組まれながら歩き出す咲夏。
けれど、ふと後ろを歩く冬弥の方を振り返ると、冬弥は自分の視線に気づいた瞬間、内緒だよと言わんばかりに、唇の前で人差し指をスッと立ててみせた。
――あの日、体育館裏で交わしたのと同じ、『しーっ』のポーズ。
(あーもう、本当にずるい……っ!)
カバンの中の恋愛成就お守りが揺れ、そしていまだに右手に残る、冬弥の熱い手のひらの感触。
元の楽しい日常に戻ったはずなのに、咲夏の胸の奥のドクドクという心地よい音は、京都のうららかな青空の下、いつまでもいつまでも、甘く熱く鳴り響き続けていた。
怜には気づいて欲しくなかったんだ"
その甘く切ない言葉の余韻が、雨上がりの竹林にさらさらと心地よく溶けていく。
咲夏は顔から火が出るほどの熱を帯びながら、いまだに冬弥に握られたままの自分の右手を見つめて完全にフリーズしていた。
――ガサガサッ!
そのとき、静かな竹林の奥の藪から、激しい足音と共にお馴染みの賑やかな声が響き渡った。
「おーーーい!冬弥!安達さん!一体どこいってたんだよー!」
「咲夏っちーーーっ!心配したんだからねーーーっ!」
声の主は、知華、那智、そして新の3人だった。
先頭を走ってきた知華が、ふたりの姿を視界に捉えた瞬間、その大きな目をさらに丸くしてピキリと足を止める。
「あれ……?ちょっと、なにあれ……」
「お、おいおい。冬弥、お前しっかり手ぇ握ってんじゃん。王子やるねぇ」
知華がニヤニヤと口元を引きつらせ、後ろから追いついた新が「ひゅーっ!」と大袈裟に口笛を鳴らす。
那智にいたっては、くわえていたチュッパチャプスをじっと見つめながら「完全に事後だな」と不敵な笑みを浮かべていた。
「わ、わわわわっっっ!?」
親友たちの登場によって一気に現実に引き戻された咲夏は、パニックのあまり跳び上がり、慌てて冬弥の手をハプニングのように振り払った。
あまりの勢いに、冬弥は「あはは」と少し寂しそうに笑いながら、空いた自分の大きな手のひらを名残惜しそうにポケットにしまい込む。
「ごめんねみんな!通り雨がすごかったから、ちょっと雨宿りしてたんだよ」
冬弥は何食わぬ顔で爽やかに笑い、全員を安心させるように一歩前に出た。
「なんだよー、それならそうと連絡してよ!でも、怪我とかなくて良かった!」
「そうだよ咲夏、心配したんだからねっ(あとで特大の事情聴取ね)」
知華が咲夏に抱きつきながら、耳元で恐ろしい作戦会議の予告を囁いてくる。
咲夏は真っ赤な顔のまま「う、うん……ごめんね……っ」とペコペコ頭を下げるのが精一杯だった。
「じゃ、無事に全員揃ったことだし、次は嵐山のメインストリートでお土産でも見に行こーぜ!」
新がパンフレットを叩いて明るく先導し、5人の賑やかな班行動の日常へと一気に引き戻されていく。
知華に腕を組まれながら歩き出す咲夏。
けれど、ふと後ろを歩く冬弥の方を振り返ると、冬弥は自分の視線に気づいた瞬間、内緒だよと言わんばかりに、唇の前で人差し指をスッと立ててみせた。
――あの日、体育館裏で交わしたのと同じ、『しーっ』のポーズ。
(あーもう、本当にずるい……っ!)
カバンの中の恋愛成就お守りが揺れ、そしていまだに右手に残る、冬弥の熱い手のひらの感触。
元の楽しい日常に戻ったはずなのに、咲夏の胸の奥のドクドクという心地よい音は、京都のうららかな青空の下、いつまでもいつまでも、甘く熱く鳴り響き続けていた。



