学校からの帰り道、オレンジ色に染まり始めた通学路を、知華と那智、そして咲夏の三人は並んで歩いていた。
知華はカバンを背負い直しながら、まるで自分のことのように「もう!」とぶうぶう文句を垂れている。
「いやほんと、じゃんけんで委員会決めとか、もうどーしようもないじゃんねー?咲夏っち可哀想すぎる~っ!」
「あはは、まぁ、あんだけ女子の立候補がいたら、そうなるのも仕方ないよねー……」
咲夏は少しだけ寂しさを滲ませながらも、親友の優しさに救われる思いで苦笑いを返した。
すると、隣を歩く那智が両腕を頭の後ろで組み、歩調を合わせながらクールに言葉を紡ぐ。
「まぁ、でも勝負はこれからだろ。ファイトだよ、咲夏」
「えっ……っていうか!なんか二人のなかで、すごい自然な流れになっちゃってるけど!私、まだ観月くんのこと好きとか、そういうの本当によく分かんないからね!?」
急に恋バナの当事者に仕立て上げられ、咲夏はパッと顔を赤くして大慌てで弁明した。
中身がピュアな陰キャのままだからこそ、自分の恋心を認めるのにはまだ少し照れ臭さがあるのだ。
そんな咲夏の必死な様子を見て、知華がニシシとニヤリ顔を浮かべて肩をぶつけてくる。
「もう、認めちゃいなよ~、咲夏ちん♪うちら、全力で咲夏の恋を応援するぞよ?」
「そうだそうだ」
那智が足を止めずに、前を向いたままさらりと言い放った。
「咲夏は、あの小山内より全然可愛い。自信持て」
「そ、そんなことないから……っ!あーもう、なんか二人ともありがとーーーっ!」
元ヤンならではの、ストレートで女前すぎる那智の励ましに、咲夏の胸の奥のモヤモヤが一気に吹き飛んでいく。
なんて心強い味方を持ってしまったのだろう。
嬉しさと照れ臭さで胸がいっぱいになりながら、咲夏は心からの笑顔を二人に向けた。
するとその時、知華が「あ!」と何かを閃いたように顔を輝かせた。
「そういえばさ! 今、駅前のコンビニで『白桃タピオカミルク』が期間限定でやってるんだけど、みんなで行かない?」
「白桃?何それ美味しそう!いいね、行こ行こ!」
昼休みの『桃サイダー』の余韻が残っている咲夏は、その魅力的なワードに思わず声を弾ませてはしゃぐ。
那智も口元をニヤリと緩めた。
「白桃タピオカ、ありだな。一大決戦の後の栄養補給だ」
「だから決戦じゃないってば!」と咲夏が突っ込みを入れ、三人は賑やかに駅の近くのコンビニへと向かって歩き出す。
夕方の柔らかな春風がふわりと吹き抜け、咲夏のピンクベージュの髪を優しく揺らした。
クラスでの委員会決めでは一歩届かなかったけれど、自分にはこんなにも大切な居場所がある。
タピオカを求めて歩く咲夏の足取りは、いつの間にか、教室を出たときよりもずっと軽やかで前向きなものに変わっていた。



