灯里は両手を併せてしみじみと言った。
ソレイユ・ヴェールの夏のアフタヌーンティー。
素晴らしい美味しさだった。
この味を自分だけが味わっていいんだろうか。
(ソレイユ・ヴェールはイングリッシュガーデンのテラス席があるから、アフタヌーンティーにぴったりなんだけれど……)
客からアフタヌーンティーをやってほしいと要望が寄せられていることも知っている。
(でも、映え目的のお客さんが絶対来ちゃうからなぁ……)
ソレイユ・ヴェールのオーナー兼パティシエである雨宮 翡翠は天才だ。
10代の時から各コンテストを総嘗めにし、芸術作品のような繊細で美しいスィーツを作っていた。
しかし、映え目当てで「太るから」と食べずに残す客達のせいでその店を辞めて、凝ったビジュアルのスィーツを作ることができなくなった過去がある。
「店ではアフタヌーンティーはやらないが、それぞれ通常サイズの単品で出そうと思っているよ」
「え!?私、また無意識に口に出してた……?」
まだ付き合う前の失敗を思い出す灯里に、翡翠は柔らかく微笑む。



