続・スィーツしか見てなかったら天才イケメンパティシエに愛された



「……兄さん!? ああもう!」

翡翠の珍しく荒々しい声で、灯里は覚醒した。

ベッドの中から顔を出すと、ため息をつきながらスマホをテーブルに置く翡翠が目に映る。

「……翡翠さん、どうかした?」
「灯里、起きてたのか。兄が明日からこっちに来るらしくて……」
「何か用事?」
「うーん……。灯里は兄の言うことを気にしなくていいから」
「?」

翡翠が言い澱むことが珍しくて、灯里は首をひねる。

(翡翠さんのお兄さんの用事って、もしかして……私のチェック!?)

翡翠の実家である雨宮家は多くの土地を所有する、いわゆる富豪だ。
今、灯里と翡翠が住んでいる高級マンションも雨宮家の不動産の一つ。

雨宮家の不動産業を継いだ敏腕社長の長男、雨宮黒耀。33歳。

ちなみにこういった雨宮家の情報は、翡翠から直接聞いたのではなく、灯里がネット検索して知った情報だ。

(翡翠さんと離れたくないから、認めてもらえるよう頑張るぞ! そうだ、あの人に相談しよう)

兄の訪問について悩む翡翠は、灯里が密かに決意したことに気付かなかった。