君と最後のメロディを

「……結果発表、今日だね。」

放課後の音楽室。

碧唯はスマホを握りしめたまま、落ち着かない様子で画面を見つめていた。

「緊張してる?」

隣で翠が笑う。

「するよ……。」

「碧唯が?」

「するよ!」

碧唯は少しむっとする。

「だって、私の夢に関わることだもん。」

その言葉を聞いて、翠は優しく笑った。

「そっか。」

「でも。」

翠は碧唯を見る。

「結果がどうでも、俺は変わらないよ。」

「碧唯が作った曲は、俺にとって一番だから。」

「……翠。」

その時。

スマホが震えた。

二人の動きが止まる。

「メール……。」

碧唯の指が震える。

恐る恐る画面を開く。

――――

『高校生作曲コンテスト結果のお知らせ』

松宮碧唯さんの作品「光」は、最優秀賞に選ばれました。

――――

「……。」

碧唯は何度も画面を見る。

「え……?」

「嘘……。」

翠が隣から画面を見る。

そして――

「碧唯!!」

思い切り笑った。

「やったじゃん!!」

「……。」

碧唯の目から涙がこぼれる。

「私……。」

「夢、叶った……?」

翠は迷わずうなずく。

「うん。」

「叶った。」

「まだ途中だけど。」

「碧唯の夢は、ちゃんと始まった。」

碧唯は涙を拭きながら笑う。

「翠のおかげだよ。」

「違う。」

翠は首を振った。

「碧唯が頑張ったから。」

「俺はただ、隣にいただけ。」

その言葉に、碧唯は小さく笑う。

「それが一番大きいんだよ。」



数日後。

学校では碧唯の名前が少しずつ広まっていた。

「松宮さん、すごい!」

「本当に作曲家になるの?」

そんな声を聞くたび、碧唯は嬉しくなる。

でも――

その日の帰り道。

「碧唯?」

翠が立ち止まる。

「どうした?」

「……ちょっと疲れただけ。」

碧唯は笑った。

いつもの笑顔。

でも、翠は少しだけ違和感を覚えた。

「本当に?」

「本当。」

「無理してない?」

「してないよ。」

翠はそれ以上聞かなかった。

でも心の中では思っていた。

(碧唯。)

(何か隠してる?)

まだ誰も知らない。

小さな違和感が、二人の未来を変えることになるなんて。