碧唯、これ見て。」
ある日の放課後。
翠がスマホを差し出した。
画面には、音楽関係のニュースが表示されている。
「高校生作曲コンテスト……?」
碧唯が読み上げる。
「全国の高校生から曲を募集してるんだって。」
「……。」
碧唯の目が少し輝いた。
「出してみたら?」
翠が言う。
「無理だよ。」
碧唯はすぐに首を振った。
「私なんて、まだ趣味で作ってるだけだし。」
「でも。」
翠は真剣な顔になる。
「この前の曲、何万人もの人が聴いた。」
「それでも……。」
「碧唯。」
翠は優しく笑った。
「夢って、準備が全部できてから追いかけるものじゃないと思う。」
「怖くても、一歩踏み出した人が叶えるものだよ。」
碧唯は黙ってコンテストの画面を見る。
小さい頃から憧れていた。
自分の曲が、誰かの心に届くこと。
でも同時に、不安もあった。
「……私にできるかな。」
「できる。」
即答。
「翠は本当に迷わないね。」
「碧唯のことだから。」
その言葉に、碧唯は少し笑った。
⸻
その日から、碧唯は毎日音楽室に通った。
授業が終わるとピアノの前へ。
何度もメロディを作り直す。
「ここ、もっと明るくしたい。」
「でも、この部分は少し寂しくて……。」
ノートはどんどん埋まっていく。
翠はそんな碧唯を、いつも隣で見守った。
「無理してない?」
「大丈夫。」
「ちゃんと休んでる?」
「休んでる。」
「嘘。」
「……。」
「顔に出てる。」
碧唯は困ったように笑う。
「翠って、お母さんみたい。」
「碧唯のこと心配してるだけ。」
「……ありがとう。」
⸻
数週間後。
碧唯は完成した一曲を、翠に聴かせた。
『
『光』
作詞・作曲:松宮碧唯
いつもの帰り道
君と歩いた景色
何気ない毎日が
宝物だと気づいた
うまく笑えない日も
涙を隠した夜も
君の「大丈夫」が
僕を救ってくれた
ひとりじゃ見えなかった
小さな幸せたち
君が教えてくれたんだ
生きてるって 綺麗だね
もしも君が暗闇の中で
明日を見失っても
僕がここで歌うよ
君を照らす光になるよ
流した涙の数だけ
優しくなれるから
傷ついた過去さえ全部
未来へ続く道になる
だからもう泣かないで
君はひとりじゃない
季節が巡っても
変わらないものがある
君と交わした言葉
胸の奥に残ってる
誰かのために生きる
意味を探していたけど
本当は君がいたから
前を向けたんだ
いつか離れる日が来ても
忘れないでいてほしい
一緒に笑った時間は
永遠に消えないから
もしも君が未来の中で
迷子になりそうでも
この歌を思い出して
君を照らす光になるよ
世界中が敵になっても
僕だけは信じてる
君が生きるその場所が
優しい明日になるように
出会ってくれてありがとう
見つけてくれてありがとう
君がくれた温もりを
今度は僕が届けるよ
小さなこの歌がいつか
誰かの希望になるなら
僕は何度でも歌うよ
君へ贈る――
永遠の光を』
「どうかな。」
翠はイヤホンを外す。
そして、いつものように笑った。
「碧唯。」
「なに?」
「これ、絶対届く。」
「……。」
「俺が一番最初に聴いたこの曲。」
「いつか、たくさんの人が聴くと思う。」
碧唯は少し涙ぐみながら笑った。
「翠がそう言うなら、信じてみる。」
その夜。
碧唯はコンテストへ曲を送った。
送信ボタンを押す手は震えていた。
でも、不思議と怖くなかった。
隣には、自分を信じてくれる人がいたから。
――そして数日後。
二人のもとに、一通のメールが届く。
そこには、思いもしなかった言葉が書かれていた。
「最優秀賞候補に選ばれました。」
碧唯の夢への一歩が、今始まった。
ある日の放課後。
翠がスマホを差し出した。
画面には、音楽関係のニュースが表示されている。
「高校生作曲コンテスト……?」
碧唯が読み上げる。
「全国の高校生から曲を募集してるんだって。」
「……。」
碧唯の目が少し輝いた。
「出してみたら?」
翠が言う。
「無理だよ。」
碧唯はすぐに首を振った。
「私なんて、まだ趣味で作ってるだけだし。」
「でも。」
翠は真剣な顔になる。
「この前の曲、何万人もの人が聴いた。」
「それでも……。」
「碧唯。」
翠は優しく笑った。
「夢って、準備が全部できてから追いかけるものじゃないと思う。」
「怖くても、一歩踏み出した人が叶えるものだよ。」
碧唯は黙ってコンテストの画面を見る。
小さい頃から憧れていた。
自分の曲が、誰かの心に届くこと。
でも同時に、不安もあった。
「……私にできるかな。」
「できる。」
即答。
「翠は本当に迷わないね。」
「碧唯のことだから。」
その言葉に、碧唯は少し笑った。
⸻
その日から、碧唯は毎日音楽室に通った。
授業が終わるとピアノの前へ。
何度もメロディを作り直す。
「ここ、もっと明るくしたい。」
「でも、この部分は少し寂しくて……。」
ノートはどんどん埋まっていく。
翠はそんな碧唯を、いつも隣で見守った。
「無理してない?」
「大丈夫。」
「ちゃんと休んでる?」
「休んでる。」
「嘘。」
「……。」
「顔に出てる。」
碧唯は困ったように笑う。
「翠って、お母さんみたい。」
「碧唯のこと心配してるだけ。」
「……ありがとう。」
⸻
数週間後。
碧唯は完成した一曲を、翠に聴かせた。
『
『光』
作詞・作曲:松宮碧唯
いつもの帰り道
君と歩いた景色
何気ない毎日が
宝物だと気づいた
うまく笑えない日も
涙を隠した夜も
君の「大丈夫」が
僕を救ってくれた
ひとりじゃ見えなかった
小さな幸せたち
君が教えてくれたんだ
生きてるって 綺麗だね
もしも君が暗闇の中で
明日を見失っても
僕がここで歌うよ
君を照らす光になるよ
流した涙の数だけ
優しくなれるから
傷ついた過去さえ全部
未来へ続く道になる
だからもう泣かないで
君はひとりじゃない
季節が巡っても
変わらないものがある
君と交わした言葉
胸の奥に残ってる
誰かのために生きる
意味を探していたけど
本当は君がいたから
前を向けたんだ
いつか離れる日が来ても
忘れないでいてほしい
一緒に笑った時間は
永遠に消えないから
もしも君が未来の中で
迷子になりそうでも
この歌を思い出して
君を照らす光になるよ
世界中が敵になっても
僕だけは信じてる
君が生きるその場所が
優しい明日になるように
出会ってくれてありがとう
見つけてくれてありがとう
君がくれた温もりを
今度は僕が届けるよ
小さなこの歌がいつか
誰かの希望になるなら
僕は何度でも歌うよ
君へ贈る――
永遠の光を』
「どうかな。」
翠はイヤホンを外す。
そして、いつものように笑った。
「碧唯。」
「なに?」
「これ、絶対届く。」
「……。」
「俺が一番最初に聴いたこの曲。」
「いつか、たくさんの人が聴くと思う。」
碧唯は少し涙ぐみながら笑った。
「翠がそう言うなら、信じてみる。」
その夜。
碧唯はコンテストへ曲を送った。
送信ボタンを押す手は震えていた。
でも、不思議と怖くなかった。
隣には、自分を信じてくれる人がいたから。
――そして数日後。
二人のもとに、一通のメールが届く。
そこには、思いもしなかった言葉が書かれていた。
「最優秀賞候補に選ばれました。」
碧唯の夢への一歩が、今始まった。

