君と最後のメロディを

「……投稿。」

放課後。

碧唯はスマホの画面を見つめながら、小さくつぶやいた。

「よし。」

完成したばかりのオリジナル曲。

弾き語りを録画し、動画投稿アプリにアップした。

タイトルは――

『君が笑えるように』

「どうせ誰も見ないよ。」

そう笑ってスマホをしまう。



翌朝。

「碧唯ーーーー!!」

教室に入った瞬間、翠が勢いよく駆け寄ってきた。

「え!?な、なに!?」

「見た!?スマホ!」

「スマホ?」

碧唯が画面を開くと、通知が止まらない。

『いいね 10,328件』

『コメント 5,214件』

『フォロワーが3万人増えました』

「……え?」

碧唯は固まった。

「うそ……。」

震える手で動画を開く。

再生回数。

3,200,000回。

「ええぇぇぇ!?」

教室中が碧唯の声で包まれた。

クラスメイトも集まってくる。

「松宮じゃん!」

「この曲すごくない!?」

「昨日おすすめに出てきた!」

「この人、うちの学校だったの!?」

碧唯は状況が飲み込めない。

「なんで……。」

翠は誰よりも嬉しそうに笑った。

「だから言ったじゃん。」

「碧唯の曲は絶対届くって。」

碧唯の目には涙が浮かぶ。

「でも……こんなにたくさんの人が聴いてくれるなんて思わなかった。」

そのとき、一つのコメントが目に入った。

『この曲を聴いて、つらかった気持ちが少し楽になりました。ありがとう。』

碧唯はその一文を何度も読み返した。

「……。」

「翠。」

「ん?」

「私ね。」

碧唯は少し涙ぐみながら笑った。

「誰かを救える曲を作るのが夢だったの。」

「うん。」

「一人でも、誰かの心に届いたんだね。」

翠は優しく碧唯の頭をなでた。

「一人じゃない。」

「これからもっとたくさんの人に届く。」

「碧唯の夢は、ここから始まるんだから。」

その言葉に、碧唯は力強くうなずいた。

まだ二人は知らない。

この一曲が、碧唯の人生を大きく変え、多くの人の心に残る”奇跡のメロディ”と呼ばれるようになることを。