秋になった。
窓の外では、木々が少しずつ色づき始めていた。
音楽室では今日も、二人の時間が流れる。
「翠。」
「ん?」
「サビ、もう少し優しくしたい。」
「こんな感じ?」
翠は楽譜を書き直す。
「うん、それ!」
「やっぱり翠、分かってる。」
「毎日碧唯の曲を書いてるからな。」
二人は笑い合った。
そんな穏やかな時間。
ガラガラッ。
「松宮さん、岬くん。」
先生が音楽室に入ってきた。
「これ、松宮さん宛て。」
一通の封筒を机に置く。
「ありがとうございます。」
先生が出ていくと、碧唯は不思議そうに封筒を見つめた。
差出人は——
『スターライトレコード』
「……え?」
翠も目を見開く。
「レコード会社?」
震える手で封を開ける。
中には一枚の手紙。
碧唯はゆっくり読み始めた。
『松宮碧唯様
あなたの楽曲「光」を拝聴いたしました。
高校生とは思えない表現力と、人の心に寄り添う歌詞に感銘を受けています。
一度、お話をさせていただけないでしょうか。』
「……。」
碧唯は言葉を失った。
「碧唯!」
翠が思わず立ち上がる。
「すごいじゃん!」
「夢に近づいたじゃん!」
でも。
碧唯は笑わなかった。
「……どうした?」
「私。」
手紙を握りしめる。
「今の私でいいのかな。」
「え?」
「手も動かない。」
「いつ倒れるかも分からない。」
「そんな私が、本当に作曲家を目指していいのかな……。」
部屋が静まり返る。
翠はゆっくり碧唯の前に立った。
「碧唯。」
「夢ってさ。」
「完璧な人だけが叶えるものじゃない。」
「苦しみも。」
「涙も。」
「全部、その人の音楽になる。」
「……。」
「俺は、今の碧唯だから作れる曲があると思う。」
「だから。」
翠は手紙を碧唯の手に戻した。
「逃げるな。」
「夢のほうから迎えに来てくれたんだ。」
「今度は碧唯が、その手をつかむ番。」
碧唯は涙を流しながらうなずく。
「……うん。」
「挑戦してみる。」
その時。
突然、碧唯の体がぐらりと揺れた。
「碧唯!」
翠がとっさに支える。
碧唯は苦しそうに息を整えながら、小さく笑った。
「ごめん……。」
「……。」
翠は笑わなかった。
支える腕に、力が入る。
(もう限界なんじゃないか……。)
そんな不安が、胸を締めつける。
それでも碧唯は、手紙を胸に抱きしめていた。
夢だけは、絶対に離したくなかったから。
窓の外では、木々が少しずつ色づき始めていた。
音楽室では今日も、二人の時間が流れる。
「翠。」
「ん?」
「サビ、もう少し優しくしたい。」
「こんな感じ?」
翠は楽譜を書き直す。
「うん、それ!」
「やっぱり翠、分かってる。」
「毎日碧唯の曲を書いてるからな。」
二人は笑い合った。
そんな穏やかな時間。
ガラガラッ。
「松宮さん、岬くん。」
先生が音楽室に入ってきた。
「これ、松宮さん宛て。」
一通の封筒を机に置く。
「ありがとうございます。」
先生が出ていくと、碧唯は不思議そうに封筒を見つめた。
差出人は——
『スターライトレコード』
「……え?」
翠も目を見開く。
「レコード会社?」
震える手で封を開ける。
中には一枚の手紙。
碧唯はゆっくり読み始めた。
『松宮碧唯様
あなたの楽曲「光」を拝聴いたしました。
高校生とは思えない表現力と、人の心に寄り添う歌詞に感銘を受けています。
一度、お話をさせていただけないでしょうか。』
「……。」
碧唯は言葉を失った。
「碧唯!」
翠が思わず立ち上がる。
「すごいじゃん!」
「夢に近づいたじゃん!」
でも。
碧唯は笑わなかった。
「……どうした?」
「私。」
手紙を握りしめる。
「今の私でいいのかな。」
「え?」
「手も動かない。」
「いつ倒れるかも分からない。」
「そんな私が、本当に作曲家を目指していいのかな……。」
部屋が静まり返る。
翠はゆっくり碧唯の前に立った。
「碧唯。」
「夢ってさ。」
「完璧な人だけが叶えるものじゃない。」
「苦しみも。」
「涙も。」
「全部、その人の音楽になる。」
「……。」
「俺は、今の碧唯だから作れる曲があると思う。」
「だから。」
翠は手紙を碧唯の手に戻した。
「逃げるな。」
「夢のほうから迎えに来てくれたんだ。」
「今度は碧唯が、その手をつかむ番。」
碧唯は涙を流しながらうなずく。
「……うん。」
「挑戦してみる。」
その時。
突然、碧唯の体がぐらりと揺れた。
「碧唯!」
翠がとっさに支える。
碧唯は苦しそうに息を整えながら、小さく笑った。
「ごめん……。」
「……。」
翠は笑わなかった。
支える腕に、力が入る。
(もう限界なんじゃないか……。)
そんな不安が、胸を締めつける。
それでも碧唯は、手紙を胸に抱きしめていた。
夢だけは、絶対に離したくなかったから。

