君と最後のメロディを

高校二年生の春。

新しいクラス、新しい教室。

でも、一つだけ変わらないことがある。

「碧唯ーー!!」

朝から廊下中に響く大きな声。

「……うるさい。」

教室へ入ろうとした碧唯の隣に、息を切らした岬翠が並んだ。

「おはよう!」

「おはよう。」

「今日もかわいい。」

「朝から何言ってるの?」

「本当のこと。」

碧唯は呆れたように笑う。

翠は昔からこうだ。

毎日のように「かわいい」と言ってくるし、荷物も持とうとする。

「ほら、ギター。」

「自分で持てるよ。」

「でも持つ。」

「なんで?」

「碧唯の手は大事だから。」

「もう……。」

結局、翠はギターケースを持って歩き出した。

そんな二人を見たクラスメイトが笑う。

「また始まった。」

「岬って本当に松宮のこと好きだよな。」

「隠してないし。」

翠はあっさり答える。

碧唯は一気に顔を赤くした。

「ちょっと、翠!」

「好きだけど?」

「そういうことを学校で言わないの!」

教室中が笑いに包まれる。

翠も楽しそうに笑った。

碧唯は恥ずかしくて机に突っ伏す。

「もう知らない……。」

そんな碧唯を見て、翠は優しく頭をぽんぽんした。

「拗ねてもかわいい。」

「だからやめて!」

また笑い声が響く。

高校二年生。

まだ誰も知らない。

音楽が大好きな少女が、この先どんな曲を生み出すのか。

そして、その曲が誰かの人生を変えることになるなんて――。