君と最後のメロディを

夏祭りの日。

色とりどりの屋台が並び、夜空には提灯の灯りが揺れていた。

「翠、あっち行こう!」

「転ぶなよ。」

「子どもじゃないもん。」

笑いながら歩く碧唯。

その笑顔を見つめる翠は、何度も言おうとしては言えない言葉を飲み込んでいた。

――今日こそ伝えよう。

そう決めていた。

祭りの最後。

二人は川沿いの土手に座って花火を見上げていた。

「きれい……。」

碧唯が小さくつぶやく。

その横顔を見た翠は、静かに口を開いた。

「碧唯。」

「ん?」

「俺さ。」

深呼吸をする。

「ずっと好きだった。」

碧唯は驚いて翠を見る。

「幼稚園の頃も、小学生の頃も、中学生になっても。」

「気づいたら、ずっと碧唯しか見えてなかった。」

花火が夜空に咲く。

「碧唯。」

「俺と付き合ってください。」

静かな時間が流れた。

碧唯の目には涙が浮かんでいた。

「……私。」

「病気なのに。」

思わず本音がこぼれる。

「それでも?」

翠は一歩近づく。

「病気だから好きなんじゃない。」

「病気でも好きなんじゃない。」

「碧唯だから好きなんだ。」

「笑うところも。」

「曲を作る姿も。」

「強がるところも。」

「泣き虫なところも。」

「全部。」

「全部、大好き。」

碧唯は涙を流しながら笑った。

「……私も。」

「翠が好き。」

「ずっと前から。」

翠はほっとしたように笑う。

「じゃあ。」

「今日から彼氏。」

「……うん。」

「今日から彼女。」

二人は照れながら笑い合う。

花火が夜空いっぱいに咲いた。

その光の下で、

二人は初めて恋人になった。

その幸せな時間が、永遠に続くと信じながら。