「……聞いたか、ジジイ。時代はもう変わってんだよ。俺の未来は、俺と陽菜で決める。アンタの指図はもう受けねぇ」
さすがのおじい様もワナワナと唇を震わせるだけで、もはや一言も言い返すことができなかった。
「さぁおじい様。ロマンチックな夜の邪魔をしていないで、あちらで温かいお茶でもいかが? わたくしのおばあ様にもテレビ電話を繋ぎますから、直接こってり絞られるといいですわ」
麗華さんが半ば強引におじい様の腕を引き、足早にVIPスペースから連れ出していく。
去り際、麗華さんは私に向かって、もう一度パチンと華麗なウインクを飛ばしてくれた。
(麗華さん、めっちゃくちゃ良い人だ……!!)
嵐が去った大講堂。
再び静寂が訪れた会場に、優雅なワルツの生演奏が静かに流れ始める。
「……やっと、邪魔者が消えたな」
朔先輩は、唖然として立ち尽くしている私の前にゆっくりと膝をついた。
まるで、本当の王子様がシンデレラに跪くように。
「森下陽菜さん。俺の、たった一人の特別なお姫様」
まっすぐに見上げてくる、甘い瞳。
差し出された大きくて綺麗な手が、私を待っている。
「――俺と、踊ってくれますか?」
チカチカと回るカラオケのミラーボールより、何百倍も眩しいシャンデリアの光の下。
私はあふれそうになる涙をこらえて、最高の笑顔で、絶対君主の手を強く握り返した。
「……はいっ!」


