「う、嘘でしょ……朔様が、女の子をエスコートしてる……!?」
「隣にいるの、特待生の陽菜さんじゃない!?」
「信じられない、あんなにあの子可愛かった!?……まるで本物のお姫様みたい……!」
静寂の後、爆発したようなさざ波が会場全体に広がっていく。
フリルいっぱいの純白のドレスとティアラを身に纏った私に向けられるのは、嘲笑ではなく、ため息混じりの感嘆の声だった。
けれど、そんな周囲の反応など一切気にする様子もなく、朔先輩は堂々とした足取りで私を連れて赤絨毯の中央を進んでいく。
その先――会場の一番奥にある一段高くなったVIPスペースに、待ち構えている影。
「……朔。それは一体、何の冗談のつもりだ」
おじい様の隣には、真紅のマーメイドドレス姿で立っている綺麗な女の人が居る。
私と目が合うと、なぜかぱちりと片目を瞑ってくる。
どういうこと!?
「お前の婚約者は、こちらの麗華さんだろう!?」
地を這うような低く威圧的な声。
鋭い鷹のような目で私を射抜いたのは、昨日、学校の裏門で私を脅しつけた学園の大スポンサー――朔先輩のおじい様……だ。
ながーい溜息を吐いて肩を少しだけ上げた朔先輩が、おじい様と向かい合うようにして立つ。
それから、マイクを通したわけでもないのに、しんとした大講堂に「お前ら全員、よく聞け」という朔先輩の声が響き渡った。
絶対君主の放つ圧倒的な覇気に、会場の生徒たちがゴクリと息を呑む。
朔先輩は私の腰にグッと腕を回し、自分の胸にぴったりと引き寄せた。
全校生徒、そしておじい様と麗華さんを真っ向から見据え、これ以上ないほど不敵な笑みを浮かべて宣言する。
「俺のパートナーは、こいつだけだ。家柄も、ジジイの勝手な命令も関係ねぇ。俺の隣に立つのは、森下陽菜以外あり得ない」
会場が「ひゃあっ!」という女子たちの黄色い悲鳴と、大きなどよめきに包まれる。
「き、貴様っ……! 一ノ瀬の次期当主としての自覚を忘れたか! そのような小娘一人、私がどうとでもできると――」
顔を真っ赤にして杖を突き鳴らすおじい様。
その怒声が会場に響き渡った、その時だった。


