初恋のパルファムには、女嫌いな天才を狂わせる毒が入っている。

私の健気な強がりに、千瀬はほんの一瞬だけ目を見開いた。

冷徹だった彼の表情がわずかに揺らぎ、言葉を詰まらせたように口元が引き結ばれる。

けれど、彼はすぐにフンと鼻で笑うと、ポケットに手を突っ込んで背を向けた。

「ふーん。口だけは一人前だな、お前。……じゃあ、次の課題でその大層なプライド、へし折ってやるよ」

冷たい言葉とは裏腹に、足早に調香室を出ていく彼の耳の後ろが、ほんの少しだけ、夕焼けのせいではない赤みに染まっていたような気がした。