初恋のパルファムには、女嫌いな天才を狂わせる毒が入っている。

そして、最悪の気まずさを抱えたまま放課後を迎えてしまった。

今日の課題実習は、お互いに昨日のデータを持ち寄って、さらに調香を進めるはずの時間だった。

けれど、千瀬くんは放課後のチャイムが鳴ると同時に、私の顔を一度も見ないまま、カバンを掴んで無言で教室を出ていってしまったのだ。

「……何、それ。ライバルのくせに、途中で逃げるなんてサイテー、です。」

誰もいなくなった教室で、私はぽつりと呟いた。悔しくて、悲しくて、なんだか涙がこぼれそうになる。

でも、ここで泣いたら、本当に彼の言う通り「感情で調香している無難な2位」で終わってしまう。

「絶対に、次のコンテストで千瀬くんの鼻をあっと言わせてやる……!」

私は気合を入れ直すように、自分の頰を両手でパンと叩いた。

そして、昨日の実験データをまとめた大切な研究ノートを手に、一人で実習の居残りをするために調香室へと向かった。