初恋のパルファムには、女嫌いな天才を狂わせる毒が入っている。

ドクン、ドクン、と。

静まり返った調香室の中で、激しい心音がうるさく響き渡る。

(……待って。これ、どっちの心音!?)

私の心臓の音なのか、それとも、私の手首を掴んでいる千瀬くんの心臓の音なのか、もう分からなかった。

ライバルとして絶対に怯みたくないのに、頭が真っ白になって身体がすくんでしまう。

千瀬くんは、私の手首に顔を近づけたまま、じっと動かなくなった。

吸い込むように、何度も深く、私の体温に混ざり合う香りを確かめている。

窓の外から差し込む夕暮れの濃い琥珀色の光が、私たちの影を床に長く伸ばしていた。

「……千瀬くん、もう、いいでしょ……?」

あまりのじれったさに、私が消え入りそうな声で抗議した、その時だった。

私の肌の奥から立ち上る、無香料の石鹸の匂い――凛自身の「甘い素肌の匂い」が、ダイレクトに彼の嗅覚を貫いた。