初恋のパルファムには、女嫌いな天才を狂わせる毒が入っている。

千瀬くんの指先が、私の肌に触れている。

その事実に頭がどうにかなりそうだったけれど、私はライバルとして、彼にだけは絶対に弱みを見せたくなかった。

「……動いてないですよ。千瀬くんの方こそ、手が震えてるんじゃないですか?」

私が必死の強がりで少しだけ意地悪に微笑んでみせると、千瀬くんはピクッと眉を動かした。

「バカ言え。俺の、手が、震えるわけ……」

彼は言いかけ、私の手首を持ったまま、もう片方の手で青い遮光瓶のスポイトを吸い上げた。

透明な試作液が、ガラスの管を満たしていく。

「いくぞ、お前。……しっかりその鈍い鼻で、俺の計算の答えを覚えておけよ」

千瀬くんは私の脈打つ手首のすぐ上で、スポイトの先を静かに止めた。

窓の外では、カラスの声が遠くで小さく響いている。

調香室の中は、まるで二人だけの世界になったように静まり返っていた。