初恋のパルファムには、女嫌いな天才を狂わせる毒が入っている。

「……どうぞ。私の肌で、好きなだけ確かめればいいですよ。」

私は負けたくない一心で、少しだけ強気にそう言い放つと、制服の袖を少し捲り上げて、右の手首を彼の前に差し出した。

恋愛経験が一切ない私の手首は、緊張のせいで、自分でも驚くほど小さく震えていた。

千瀬くんにこの動揺が伝わってしまわないか、それだけがひどく恐ろしかった。

千瀬くんは差し出された私の手首をじっと見つめたまま、一瞬、ためらうように視線を彷徨わせた。

極度の女嫌いである彼にとって、いくらライバルの実力を確かめるためとはいえ、女子の素肌に直接触れるという行為は、本来なら最も避けるべきことのはずだった。

「……本当につけてねぇんだろうな、余計なもん」

彼はもう一度、念を押すように低く呟いた。

その声はいつもより少しだけ掠れていて、調香室の静寂に深く溶け込んでいく。