千瀬はそう言うと、白シャツの袖を捲り上げた綺麗な指先で、私が抱えていた実験ノートをそっと取り上げ、机の隅へと追いやった。
カタン、と小さな音が静かな調香室に響き渡り、私たちの間に、もう遮るものは何もなくなった。
「千瀬くん……?」
思わず一歩引こうとした私の気配を察したのか、彼の長い睫毛が微かに揺れる。
「逃げるなよ、お前。自分から言い出したんだろ」
ぶっきらぼうに遮る彼の言葉には、ライバルとしての意地と、それから、何か新しい香りの手がかりを掴もうとする調香師としての執念が混ざり合っているようだった。
「逃げるわけじゃないです。……ただ、千瀬くんが急に近づいてくるから、びっくりしただけです。」
私はきゅっと唇を結び、大人しい自分の中にある『負けたくない』という気持ちを必死にかき集めて、その場に踏みとどまった。
カタン、と小さな音が静かな調香室に響き渡り、私たちの間に、もう遮るものは何もなくなった。
「千瀬くん……?」
思わず一歩引こうとした私の気配を察したのか、彼の長い睫毛が微かに揺れる。
「逃げるなよ、お前。自分から言い出したんだろ」
ぶっきらぼうに遮る彼の言葉には、ライバルとしての意地と、それから、何か新しい香りの手がかりを掴もうとする調香師としての執念が混ざり合っているようだった。
「逃げるわけじゃないです。……ただ、千瀬くんが急に近づいてくるから、びっくりしただけです。」
私はきゅっと唇を結び、大人しい自分の中にある『負けたくない』という気持ちを必死にかき集めて、その場に踏みとどまった。

