初恋のパルファムには、女嫌いな天才を狂わせる毒が入っている。

千瀬の一歩が、床をかすかに鳴らす。

普段なら絶対に女子に近づかない彼が、信じられないほどゆっくりと、私との距離を詰めてくる。

すっと通った鼻筋、端正な顔立ちが目の前に迫るにつれて、ウブな私の心臓はうるさいほどの鼓動を刻み始めていた。

「おい、お前。……本当に、余計なもんつけてねぇんだろうな」

彼の低い声が、すぐ近くで鼓動を震わせる。私はナメられたくなくて、必死に彼を睨み返した。

「つけてないって言ってますよね! 疑うなら、今すぐ私の試作の出来を見てみればいいじゃないですか。」

強気に言い返す私の前で、千瀬はフフッと、どこか挑発的な薄い笑みを浮かべた。

その綺麗な瞳が、私の手首のあたりをじっと見つめている。

「……じゃあ、確かめてやるよ。お前のその、偉そうな大口が本物かどうか」