ひまわりが咲く場所で(続)

俺は日記なんて書く性格じゃない。

毎日仕事に追われ、感情を言葉にすることなんて、ほとんどなかった。

だからこれは、最初で最後の記録だ。

あの日。


俺は、俺を孤独から救ってくれた一番大切な人を守れなかった。

「また来世で会おう。」

そう笑った莉緒に、俺は「必ず見つける」と約束した。

あの約束だけを胸に、生きてきた。

何度も諦めようと思った。

「生まれ変わりなんて、あるはずがない。」

そう自分に言い聞かせても、心だけは諦めてくれなかった。

だから医者になった。

誰かを救い続ければ、いつかまた君に会える気がしたから。

そして、出会った。

看護師として俺の前に現れた、一人の女性。

梨衣。

初めて名前を聞いた日から、不思議なくらい目が離せなかった。

笑い方も。

泣き方も。

誰かを助けようとする優しさも。

全部、莉緒だった。

だけど、お前は何も覚えていなかった。

思い出してほしい気持ちと、このまま幸せに生きてほしい気持ち。

その間で、俺は何度も迷った。

だから何も言えなかった。

ただ、守ることしかできなかった。

ストーカーからも。

過去からも。

そして、お前自身の苦しみからも。

あの日。

ひまわり畑の記憶を口にした瞬間、時間が止まった。

「思い出した。」

その一言で、俺の十五年間が報われた。

……ありがとう。

約束を忘れなかったのは、お前だけじゃない。

俺も、一日たりとも忘れたことはなかった。

もし、前世の俺が今の俺を見たら笑うだろう。

「ちゃんと約束を守れたな」って。

莉緒。

いや、梨衣。

もう前世に縛られなくていい。

俺が愛しているのは、今を生きるお前だ。

看護師として笑うお前も。

少し泣き虫なお前も。

時々無茶をするお前も。

全部、大切だ。

来年も、その先も。

ひまわりが咲くたび、お前と同じ景色を見たい。

今度は「また来世で」じゃない。

「また明日。」

そう言い合える毎日を、お前と生きていきたい。

これが俺の、最初で最後の日記。

そして――

俺の人生で、一番幸せな記録だ。