ひまわりが咲く場所で(続)

ひまわり畑からの帰り道。

車の中は静かだった。

梨衣は窓の外を眺めながら、小さくあくびをする。

「眠いなら寝ろ。」

運転しながら瑠唯が言った。

「でも、先生が運転してるのに……。」

「構わない。」

ぶっきらぼうな返事。

梨衣は少し笑う。

「じゃあ、お言葉に甘えて。」

そう言うと、ゆっくり目を閉じた。

数分後。

信号待ちで車を止めた瑠唯は、眠っている梨衣を見た。

規則正しい寝息。

安心しきった表情。

瑠唯は小さく息をつく。

「……昔と変わらない。」

前世でも莉緒は、車に乗るとすぐ眠ってしまっていた。

その姿を思い出し、思わず口元が緩む。

信号が青に変わる。

瑠唯はゆっくり車を走らせた。



病院へ戻ると、梨衣が目を覚ました。

「……着いた?」

「ああ。」

梨衣は目をこすりながら笑う。

「ごめんね、寝ちゃった。」

「謝ることじゃない。」

瑠唯は助手席のドアを開けた。

「降りろ。」

「ありがとう。」

車を降りようとした梨衣は、少し足をふらつかせる。

その瞬間。

瑠唯は自然に梨衣の手を支えた。

「大丈夫か。」

「う、うん……。」

梨衣は少し照れながら答える。

「先生って、本当はすごく優しいよね。」

「違う。」

瑠唯はすぐに否定する。

「お前だけだ。」

「え?」

瑠唯は一瞬黙り込んだ。

しまった、と心の中で思う。

普段なら絶対に口にしない言葉だった。

「……今のは忘れろ。」

耳が少し赤くなっていることに、本人だけが気づいていない。

梨衣はくすっと笑った。

「忘れません。」

「そうか。」

瑠唯は照れ隠しをするように前を向いた。

「困った看護師だ。」

梨衣は笑顔のまま、瑠唯の隣を歩く。

その様子を見た病院の職員たちは驚いていた。

「瑠唯先生が笑ってる……?」

「しかも梨衣さんには、あんなに優しいなんて。」

誰も知らない。

冷徹と呼ばれる医師が、梨衣にだけは昔と変わらない優しさを向けていることを。