ひまわりが咲く場所で(続)

倉庫の床に座り込んだ梨衣は、頭を押さえながら苦しそうに息をした。

「っ……。」

目を閉じた瞬間、見たこともないはずの景色が浮かぶ。

一面に咲き誇る、黄金色のひまわり。

夏の日差し。

風に揺れる花々。

その中で、一人の青年が優しく笑っていた。

「莉緒。」

青年は手を差し伸べる。

「またここへ来よう。」

女性は笑顔でうなずく。

『うん。来年も、その次の年も……ずっと一緒に。』

『約束だ。』

二人はひまわり畑の真ん中で、小指を絡めた。

『もし生まれ変わっても……。』

『必ず君を見つける。』

『行ってきます。』

景色は突然途切れた。

「……っ!」

梨衣は大きく息を吸い、涙をこぼす。

「ひまわり……。」

瑠唯が静かに振り返る。

「どうした。」

梨衣は震える声でつぶやいた。

「ひまわり畑……。」

その言葉を聞いた瞬間、瑠唯の瞳が揺れた。

「どうして、その場所を……。」

梨衣は瑠唯を見つめる。

「私……思い出した。」

涙が次々とあふれる。

「あの夏、一緒にひまわり畑へ行った。」

「毎年、あそこで笑い合って……。」

「『生まれ変わっても、必ず会おう』って約束した。」

瑠唯は何も言えなかった。

ずっと心にしまっていた思い出。

誰にも話したことのない、二人だけの約束。

それを梨衣が口にした。

「……莉緒。」

その名前が、自然とこぼれる。

梨衣はゆっくりとうなずいた。

「全部じゃない。でも……。」

「瑠唯と過ごした、ひまわり畑の思い出だけは、はっきり思い出した。」

瑠唯は静かに目を閉じ、小さく息をついた。

「……本当に、お前なんだな。」

冷徹なはずの医師の声は、少しだけ震えていた。

そして瑠唯は、そっと梨衣の手を握る。

「おかえり、莉緒。」

梨衣は涙を流しながら、微笑んだ。

「ただいま……瑠唯。」