ひまわりが咲く場所で(続)

翌朝。

梨衣は昨日届いたメッセージが頭から離れなかった。

『君のそばにいる男は信用しないで。』

誰が送ってきたのかも分からない。

怖くなり、スマートフォンを握りしめたまま病院へ向かった。

「おはようございます。」

ナースステーションに入ると、いつもと変わらない朝が始まる。

「おはよう。」

看護師たちが笑顔で返す中、瑠唯はカルテを見たまま短く言った。

「……おはよう。」

それだけだった。

冷たい態度はいつも通り。

だが梨衣の顔色を見た瑠唯は、何も言わずに診察室へ向かう。

「梨衣。」

低い声が響く。

「診察室へ来い。」

梨衣は不思議そうな顔で後をついて行った。

部屋の扉が閉まる。

「座れ。」

「はい……。」

瑠唯は腕を組み、静かに尋ねた。

「昨日、帰ってから何かあったか。」

梨衣は少し迷ったが、スマートフォンを差し出した。

「こんなメッセージが届いて……。」

瑠唯は画面を見る。

その瞬間、目つきが鋭く変わった。

「……番号は。」

「知らない番号です。」

瑠唯はスマートフォンを返した。

「返信はするな。番号も消すな。」

「はい。」

「今日から俺が送迎する。」

「えっ? でも先生、お忙しいですよね。」

「関係ない。」

きっぱりと言い切る。

「これは決定事項だ。」

梨衣は少し困ったように笑った。

「ありがとうございます。」

瑠唯は視線をそらし、淡々と言う。

「礼は不要だ。」

そのとき、診察室のドアをノックする音が響いた。

「瑠唯先生、失礼します。」

若い男性医師が書類を持って入ってくる。

「先生、この資料を……。」

男性医師は梨衣を見ると笑顔を向けた。

「梨衣さん、この前はありがとうございました。」

「いえ、とんでもないです。」

二人が少し会話をした、その瞬間。

「終わったか。」

瑠唯の冷たい声が部屋に響く。

男性医師は思わず姿勢を正した。

「は、はい。」

「書類を置いたら戻れ。」

「失礼します!」

男性医師は慌てて部屋を出て行った。

梨衣は首をかしげる。

「先生、あんなに急がせなくても……。」

「仕事中だ。」

短く答える瑠唯。

しかし部屋を出た男性医師は、小さく苦笑していた。

「瑠唯先生……あれ、嫉妬じゃないよな。」

もちろん、その言葉を瑠唯が聞くことはなかった。

窓の外では、一人の男が病院を見上げていた。

帽子を深くかぶり、スマートフォンで梨衣の姿を撮影する。

「医者がいても関係ない。」

男は静かに笑った。

「梨衣は、僕のものだから。」