またあなたに会えるなら、この花が咲く庭で。

トットットッ!

家の前を元気に走る音が。

ふふ。今参りますわ。

ノッカーを2回。

ちゃんと守れていますね。

「はい」

玄関は女中さんが開けますが、わたくしは自然と階段付近へ。

「なんだいあんた!」

「あら?坊ちゃん、いらっしゃい」

「こんにちは、お嬢様」

坊ちゃんは食堂へ。

あら?手にコマが。

ふふ。そういうことですのね。

コンコン
「はい」
「わたくしです」


「お嬢さん、どうされました?」

「今、お時間ありますか?」
「ええ、少しでしたら」
「坊ちゃんがお見えになりましたの、食堂にいらして頂けませんか」

食堂で過ごす約束ですものね。

坊ちゃんの耳にそっと。

⸻こちらの方はお上りさん。

⸻おのぼりさん?

⸻そう、田舎から来た人をそう呼ぶのよ。

「ふーん。にいちゃん!よろしく!」

「あんた!この方はね!」

「女中さん、僕は構いません。よろしくな」

「どうも、申し訳ありません」

お勤めに戻られました。

坊ちゃんがもじもじしていますわ。

ふふ。普段は強気ですのに。

ここはわたくしが。

「ん?そのコマ、ちょっと見せてみろ」

あら?

「どうなさったの、お上りさん?」

「いえ、見た目は子供用の玩具ですが、これは職人が作った作品です。しかもこの子が使いやすいよう設計されています、回してみないことには、なんとも言えませんが…」

「にいちゃんすげー!一発で父ちゃんのコマを見抜いたのは、にいちゃんが初めてだ!」

「お父さんは、職人さんなのか?」

「ああ!飾り職の大工なんだ!外に来てくれよ、ヤマトが回ってるところ見せてやる!」

まあ!

専用の台まで持参されていたのですね。

「わたくしたち、坊ちゃん自慢のヤマトを見ます。どうぞ料理人さんもご覧になって」
「はい。お嬢様」


「それ!」

台の上を勢い良く回っています。

お上りさんはヤマトから目を離しません。

「艶の美しさもあったが、軸がとても安定している。普通のコマはここまで回りません」

坊ちゃんが反対のポケットから、もう一つのコマと紐を出しました。

「にいちゃん、試してよ!ヤマト、すげーんだ!」

まあ!

お上りさん意外とお上手!
ですが、すぐに弾かれましたわ。

「このコマは、店で買ったやつだな」

「ヤマトは本当にお強いですわね」

「店で購入した物では、大人でも勝てないでしょう」

「え!?」

「にいちゃんそこまで分かるの!?」

「…ずるいって言われないか?」

「ああ!生まれも運のうち、って言い返してらあ」

料理人さん、お上りさんも笑ってらっしゃる!

…前よりも自然ですわ。

「こらー!」
「かあちゃん…」
「皆さんの前でなんてことを言うんだい!」
「だいたいいつもお前はね」

ふふ。

「じゃあ戻りましょう、お上りさん」
「ええ」