またあなたに会えるなら、この花が咲く庭で。

タガログ語もだいたい通じるようになった。

英語とタガログ語。

両方できるのは、今この隊には俺一人。

目が。

ジャングルの夜はこんなにも暗いのか。

前が見えない。

霞んで。

「おい、ゲーテ!大丈夫か!」
「あ、ああ」
「この紐持ってろ」

もっと体を鍛えてくるべきだった。

しかしこうも食糧がないと、どうすることもできない。

態勢を立て直す。

これでは敵に見つからないようグルグル逃げ回っているだけだ。

無理もないか。

兵は減り。

武器はなし。

食糧もない。


⸻これではいずれ。

◇ ◇ ◇

朝日だ。

あれが目的地の次の集落。

…ドサッ。

「お、おい!」

息はしている。

しかしすごい高熱だ。

「誰か手を貸してください!熱発者です!」

氷嚢などありはしない。

荷物を枕に横たえて置いておくしか。

「悪性マラリアかもしれん」

「悪性マラリア!」

「私は衛生兵だから断言はできんが、症状がとても似ている」

ゲリラ奇襲以降、足跡が残りにくい道を選んできた。悪性マラリアは、現地の住人ですら立ち入らない山深いジャングルの中で、感染しやすいと聞いたが。

俺のせいだ。

感染原因も。

こんな症状の中、俺を引っ張ったから。

⸻笑った?

「ゲーテ。大丈夫だ、君のせいじゃない」

⸻どうして、俺が自分を責めていると分かったんだ。



「おい!こっちへ来いって呼ばれてるぞ!」

「ゲーテ、俺は大丈夫だから。君の仕事をして来いよ」
「あ、ああ」

◇ ◇ ◇

「どうしてですか!」
村長は首を横に振った。
「では、何か食糧を頂けませんか?」
首を振り、去って行く。

口が重い。
「どうだった」
「…ダメです。全く交渉の余地がありませんでした」
「食糧だけでも分けてもらえんか、掛け合ったのか!」
「それも全部ダメです」

……おそらく。

「他の隊がやらかしたな」

みな、何も言わない。

「やむを得ん。次の場所を目指す」

◇ ◇ ◇

「おい」
「ど、どうだった、ゲーテ」
「次の場所を目指すことになった」
「立て、行くぞ」
「ま、待て」


あいつは自分の荷物を捨てた。

「使えるものなどもう入ってない」

なんとか歩けるな。

「行くぞ」

◇ ◇ ◇

暗いジャングルを、男一人背負って歩くのは、こうも堪えるとは。

俺の体力がないのもあるが。

こいつの…。

「⸻ゲーテ、少し休みたくなった」

「……わかった」

あそこならすぐ敵に見つかることはない。


別れの言葉などいらん。


俺ももうじき、ゆくのだから。