またあなたに会えるなら、この花が咲く庭で。

⸻この音は!

「敵機襲来!散開!」

耳を押さえていないと潰れてしまう。

こんなニッパハウスなど、爆弾が落ちれば一撃で燃える。せっかく作成した地図も、我々と共に御陀仏だ。

しかし、どこがやられているのか確認せねば。


⸻首都か!


しかし凄まじい爆撃音、雷の如く。

空だけではない。

艦砲射撃も混ざっている。

流れ弾が当たらぬよう祈るしかない。


全く、祈りだの運だの、戦争に来たというのに、まだ戦ってすらいない。

◇ ◇ ◇

爆撃が落ち着いた。

我々は首都にいた友軍の救助にゆくこととなった。

……あの凄まじい空襲と艦砲射撃を生き残った者などおるまい。


街は煤塵と化した。

まだ煙があちこちから上っている。


あ!あいつは。


「おい」

俺の呼びかけに気付いていない。

三体の遺体の前でたちつくしている。

頭から足先まで黒焦げ。
この方々はおそらく⸻。

「おい!認識票の確認手伝え!」
「はい!」

……これは。

メガネがないと読めんな。

⸻お父さんが慶応合格祝いに下さったメガネケース。

この認識票が、あの三体の方々の名前。


⸻敵は街を平すためだけに、ここまでの攻撃をしたのではないだろう。上陸して町を占拠するためだ。ぐずぐずしてはおれん。

あっちでは埋葬が着々と進んでいる。

やはり早々に撤退する作戦だ。

はー。

あいつがどこの隊か知らんが、近くに誰もいないのを見る限り、何かの任務で少数で首都に入り、あいつ以外、全滅したのだろう。

「上官、今、よろしいでしょうか」
「なんだ」
「あの三体の遺体の前にいる兵ですが、他の兵が全滅し行き場がないそうです。農民出身ですが、体力はあります。見る限り軽傷の様ですし、我が隊の荷運びくらいはできるかと」
「ああ、そうしろ」
「は!」

「おい!」

肩を揺さぶらないと気が付かないか。

「……ゲーテ」
「こっちへ来い」

⸻ 転進する。各員、直ちに撤収準備⸻

やはり。

しかし山岳部への転進は。
「おい、ゲーテ」
「なんだ」
「今の、どう言う意味だ?」
「ここを離れるから、全員直ぐに準備をしろって意味だ」
「俺もか?」
「そうだ。お前は今からこの部隊の配属になったんだ。⸻おそい!早く支度をしろ!」
「そんな急かすなよ」

それが、お前のためだ。