ルーナー・インフィルト ~月の潜入者~

バンッ!

私の部屋のドアが、勢いよく開いた。

「月(るな)!依頼だ!」

「ひゃいっ!」

「エリート校へ転校しろ!」

……へ?


「……………む、無理」

口から出たのは、その一言だけだった。

相変わらずお父さんは、言葉が足りない。

私、守乃 月(もりのるな)。

潜入者として活動している、中二。

そして……


超がつくほどの人見知り。


「せめて、内容、おし、えて?」

そう言って、こてっと頭を横に倒す。

親にでも緊張するくらい、人見知りなのだ。(まだましな方)

「くぅっ…かわいい…!はっ!あ、あぁ。この書類を見といてくれ。任せたぞ、「月の潜入者」。あと、こっちに用があったら、そこの変装セットを着けてこいよ。」

「ひゃいっ…」

月の潜入者。

それは、私の通り名。

月のスパイとも言われる。

ちなみに変装セットは、中学校上がると同時に、お父さんに「着けろ」と言われてつけ始めた物だ。

黒髪のウィッグと、カラコン黒。そして、分厚いメガネ。

私の髪は砂色で、目の色は水色の、派手な感じだ。

だから、ウィッグとカラコンは分かる。

でも、メガネまで要るのかな…?

そんなことを考えながら、早速資料を読んだ。





「…………なるほど」

潜入するのは、エリート校の、絵里乃校(えりのこう)。

小中高一貫校だ。

そして、絵里乃校に潜入し、ある男の子を護衛するらしい。

名前は、素之駄駿(そのだしゅん)。

有名な会社、「ソノダ」の社長の息子らしい。

「…やばい」

私、人見知りなんだけど⁈

その上に男の子だとか、やばいかもしれない。

なんでこうなったのか、お父さんに聞いてみなくちゃ…。


「お、お父さーん…」

私は、変装セットを着けて、会議室へ向かった。

いつもは大抵ここに居るから。

「お、月!いいとこに来た!いま、素之駄さんが来ていてな!」

よく見たら反対側に、柔らかそうな雰囲気の男の人と、同い年くらいで怖いかんじの男の子が座っている。


多分、同い年くらいの子が、駿さんだろう。

それにしても、駿さん、イケメン…。

柔らかそうな黒髪に、藍色の目。スタイルも抜群。

こんな人、世界にいるんだなぁ…。

「こんにちは、月さん。私は、素之駄武壱(そのだたけいち)だ。」

駿さんのお父さん、依頼者が、武壱さん。

「こちらが、護衛対象の駿だ。」

「っ……」

どうしよう。

あいさつ、しなくちゃいけないよね。

でも、口が開かない。

「月、無理するなよ。すみません、素之駄さん。月は、人見知りで…」

あぁ。まただ。

また、お父さんが謝った。

私の、せいで。

お父さんが、謝った。

「っ……は、じめ、まし、て。中、二の、守乃、月、です…。人、見知り、で、ごめん、なさいっ…」

そう言って、頭を下げる。

「大丈夫だよ!頭なんか下げないで。」

「わ、かり、ま、した」

あ。

やばい。

目眩、してきた…。

これ、失神するやつだ…。

そう思った直後、私は、意識を手放した。