悪役令嬢と言われていますが、誤解を解くのを諦めてしまいました。

朝日が薄いカーテン越しに差し込み、まぶたを優しく照らす。

目を覚ましたセシリアは、小さく息をついた。

身体が重い。熱を帯びた身体は鉛のようで、起き上がるだけでも全身から力が抜けていく。

昨夜も、代償魔法を使いすぎた。

「お嬢様、おはようございます……また昨夜も、あの魔法をお使いになったのですね。」

どこか悲しげな声に顔を上げると、そこには侍女のリリー・ローウェルが立っていた。

心配そうに眉を寄せるその表情に、セシリアは思わず苦笑する。

「お願いです、お嬢様。今日はお休みくださいませ。これ以上ご無理をなさってはなりません。」

リリーは両手を胸の前でぎゅっと握りしめる。

「毎朝、お嬢様のお顔を見るたびに……今度こそ倒れてしまわれるのではないかと、リリーは心配で押しつぶされそうなのです。」

本気で心配してくれている顔だ。

そのことが、不謹慎だと分かっていながらも、少しだけ嬉しい。

自然と口元が緩み、セシリアは小さく笑った。

「大丈夫よ。」

「あなたの顔を見たら、少し元気が出たもの。」

「……っ。」

一瞬目を丸くしたリリーは、すぐに困ったように笑う。

「お嬢様がお元気になるのでしたら、このリリー、地獄までだってこの顔を見せに参ります!」

「頼もしいわね。」

セシリアはくすりと笑いながら、ゆっくりと寝台から足を下ろした。

「ですが、今日は本当に……」

「今日は王宮でお茶会がある日でしょう?」

リリーの言葉を優しく遮る。

「王太子妃候補が欠席するわけにはいかないわ。」

リリーは何か言いたげに唇を結んだ。

けれど、それ以上引き止めても答えは変わらないことを誰より知っている。

小さく息をつくと、衣装棚へ向かい、いくつものドレスを見比べ始めた。

「……承知いたしました。」

「せめて、お身体への負担が少ないものをお選びいたします。」

「ありがとう。」

リリーは頷くと、淡い青のドレスをそっと取り出す。

その横顔を見つめながら、セシリアは胸の奥で静かに思う。

――この人には、どれだけ感謝してもしきれない。

幼い頃から変わらず自分のそばにいて、叱り、笑い、支えてくれた。

いつか必ず、この人には恩を返そう。

そう心に決めているのに、今日もまた心配ばかりかけてしまう自分が、少しだけ情けなかった。