手書きの文字には、書いた人の人生が浮き出てくる。
小さい頃から私、桐生京子はそんなことを思っていた。
だから私は手書きの文字が好きだ。
いわゆる、文字フェチというやつ。
とはいえ、最近はほとんど電子の文字ばかり。
仕事上のコミュニケーションはメールやチャットで簡単に済ませてしまう。
職場でも自分の手を使って文字を書く機会がずいぶんと減った気がする。
自分のフェチのこともすっかり忘れていたのに。
まさか、自分が文字フェチであることを思い出してしまうなんて……。
「桐生さん、どうかしたんですか?」
畠中君に名前を呼ばれ、遠く過去に飛んでいった意識が現在に戻ってくる。
「ううん、何でもない。少しぼーっとしちゃった」
「珍しいですね、桐生さんがぼーっとするなんて」
それはあなたのせいですよ、なんて思っても言えるわけがない。
「ちょっとお昼ご飯いつもより多く食べちゃってね。大丈夫、ありがとうね」
「それなら、よかったです」
そう言って畠中君は忙しなく私と背中合わせで対となる自分の席に腰を下ろした。
畠中君が書いた一枚の伝言メモが脳裏に浮かび上がる。
背後からカタカタとキーボードを叩く音が聞こえる。
その音を奏でている指と同じ手であのメモは書いたんだもんね。
そう思うと、普段は環境音に紛れ込んでいたキーボードを叩く音すら、まるでクラシック音楽のように優雅なもののように思えてきた。
小さい頃から私、桐生京子はそんなことを思っていた。
だから私は手書きの文字が好きだ。
いわゆる、文字フェチというやつ。
とはいえ、最近はほとんど電子の文字ばかり。
仕事上のコミュニケーションはメールやチャットで簡単に済ませてしまう。
職場でも自分の手を使って文字を書く機会がずいぶんと減った気がする。
自分のフェチのこともすっかり忘れていたのに。
まさか、自分が文字フェチであることを思い出してしまうなんて……。
「桐生さん、どうかしたんですか?」
畠中君に名前を呼ばれ、遠く過去に飛んでいった意識が現在に戻ってくる。
「ううん、何でもない。少しぼーっとしちゃった」
「珍しいですね、桐生さんがぼーっとするなんて」
それはあなたのせいですよ、なんて思っても言えるわけがない。
「ちょっとお昼ご飯いつもより多く食べちゃってね。大丈夫、ありがとうね」
「それなら、よかったです」
そう言って畠中君は忙しなく私と背中合わせで対となる自分の席に腰を下ろした。
畠中君が書いた一枚の伝言メモが脳裏に浮かび上がる。
背後からカタカタとキーボードを叩く音が聞こえる。
その音を奏でている指と同じ手であのメモは書いたんだもんね。
そう思うと、普段は環境音に紛れ込んでいたキーボードを叩く音すら、まるでクラシック音楽のように優雅なもののように思えてきた。



