出会って約一年で、自分たちは結婚式を迎えることになった。
父が教授だけど一般人である万葉とは違って、一臣側の席はお偉いさんたちや若手の医師たちでいっぱいで、正直緊張してドキドキしてしまった。
とはいえ、嬉しいドキドキだ。
だけど――聞いてはいけない話を耳にしてしまう。
お色直しのために控室へと移動していた最中のことだ。
たまたま外に出ていた一臣の同僚たちの会話が耳に入った。
『冬月のやつ、教授に取り入ってよくやったよな。あんな可愛い娘さんと結婚するなんてさ』
『同期の女医を捨ててでも、出世を取ったってことだろう? 同じ心臓血管外科同士、仕事やりづらそうだよな?』
『ああ、元カノの女医って川上和泉か。仕事やりづらくても良いんじゃないか? 冬月としては、自分と母親を捨てた父親に自分たちの存在を知らしめたいからなんだろう?』
『ああ、冬月の父親って製薬会社の社長だっけ? 母親捨てて、別の女に乗り換えたんだっけ? ……っていうか、女にだらしないとことか、父親と血は争えないな』
ショックだった。
その場で立っていられたのも不思議なぐらいに。
室内は暖房が効いて全身がガタガタ震えて
一臣が自分をだらしないと称していたのは、もしかして万葉と会いながらも元恋人の女医とも裏で繋がったりしていたからだろうか――?
自分のことを気に入ってくれたから結婚してくれたものだと思っていた。
だけど……。
所詮は、万葉は一臣にとって利用価値のある存在でしかなくて――。
『万葉さん、どうしたの?』
一臣が心配そうにこちらの顔を覗いてきていたのが……なんだか全て嘘に聞こえて……。
お色直しを終えた後からの記憶がほとんどなかった。
結婚式を挙げたホテルに一緒に泊ったけれど、式で疲れているからと断った。
『万葉さんが疲れてるなら、僕は大丈夫。これから先、機会はいっぱいあるからさ』
一臣は爽やかな笑みを浮かべていた。
別に好きでも何でもない女との初夜がどうなろうと、どうでも良いのかもしれない。
それから……。
一臣の入局と被るからと新婚旅行を半年後にしていて良かった。
もしも結婚式の後、すぐに旅行に行くことにしていたら……毎晩彼との行為を断り続けて、今頃はもう破局してしまっていたかもしれないから。


