一臣が寂しそうな瞳で万葉のことを見つめてくる。
万葉は覚悟を決めると書類を握りしめる力を強くする。
「いいえ、私はそもそも一臣さんのことはだらしないとは思っていません。むしろ、今の一臣さんを見てすごく安心しました」
そうして、周囲に守衛さん以外は誰もいないことを確認してから、万葉は一臣に抱き着いた。
ちょうど鎖骨の辺りに顔を埋める。
最近はタバコの香りはしない。シトラスの良い香りがする。今にして思えば、当直が忙しくてシャワーさえも使えない日に香水で匂いを誤魔かしていたのかもしれない。男の人の色香とシトラスの爽やかな香りが交じり合って、なんだか好きだと思った。
髪がぼさぼさで無精髭なのだって素敵だ。きっと一臣のことだから患者さんに真面目に接していたら、髭を剃るのも忘れていたのかもしれない。
「やっぱり一臣さんは誰よりも仕事熱心で浮気なんかしない男の人だって分かったから」
「万葉さん、ありがとう。俺なんかと結婚してくれて……! 貴女は俺の最高の奥さんだよ……!」
一臣が蕩けるような笑みを浮かべると、万葉のことをぎゅっと抱きしめた。


