海賊退治専門屋

 激突の火蓋は切って落とされた。

 ザイコスキーは配下の海賊たちを狂ったように操り、
 容赦なく町へと突撃させていく。

​「町の人はあたくしが守りますわ!」

 イエロさんは凄まじい氷の魔力を放ち、
海賊の進路を巨大な氷壁で遮断して、
 人々が逃げるための時間を稼いだ。

 そして、
 俺の横をすり抜けて飛び出したのは姉さんだった。
 姉さんはその異形の身体から不思議な影のようなものを伸ばすと、
 暴れる海賊たちだけを次々と包み込み、傷つけることなく安全な檻の中へと閉じ込めていく。
 誰の命も落とさせない――それは言葉を失った姉さんの、
 必死の優しさだった。

​ 前線の海賊たちが悉く捕縛されたと知るや否や、
 往生際の悪いザイコスキーは次なる策へ出た。
 今度はイエロさんの故郷である鬼族の村へと向かい、
「人間どもが攻めてくるぞ!」
 と嘘を触れ回って、
 鬼族を戦乱に巻き込もうとしたのだ。

​ だが、俺たちは逃がさない。
 イエロさんはすぐさま村へと先回りし、鬼族の長の前で毅然と言い放った。

「騙されてはなりません。
争いを起こし、
この世界を混沌に陥れようとしているのは、
あそこにいるザイコスキーですわ!」

​ イエロさんの必死の訴えと、
 俺たちの言葉、
 そして傷ついた姉さんの姿を見て、
 鬼族の長は真実を悟った。
 こうして、人間と鬼族は互いに憎み合うのをやめ、
 ザイコスキーを止めるために固く手を結んだのだ。

​「嫌よ! この世界は、あたしのものになるはずだったのよ……!」

 追い詰められ、
 本性を現して叫ぶザイコスキー。
 しかし、その野望もここまでだった。

​ イエロさんの凍てつく魔力と、
 姉さんの大いなる力が完全に同調する。

 二人の放った絶対零度の輝きがザイコスキーを包み込み、
 彼女を二度と出られない強固な氷の牢獄へと永久に閉じ込めた。

​――こうして、世界を揺るがした大戦は終わりを迎えた。

​ 戦後、新しく作られた法では、
「海賊だから」
という理由だけで一括りに処罰されることはなかった。
 ザイコスキーに操られていただけの者たちは許され、
 本当に悪いことをした者だけが厳正に裁かれる、
 そんな公平な国が作られたんだ。

​ かつて血を流し合っていた鬼族と人間は、
 今では互いに足りないものを助け合いながら、
 穏やかに暮らしている。
​ 姿が変わってしまった姉さんも、
 今では人間の街と鬼の村、
 その両方を行き来して、
 子どもたちと無邪気に遊ぶ一番の人気者になった。
 人間じゃなくなっても、泣いて、笑って、誰かを愛せるなら、
 やっぱりこの人は俺の大自慢の姉さんだ。

​ そしてイエロさんは、
 かつてのように敵を滅ぼすために世界を凍らせるのをやめた。
 その強大な力を、
 今度は天災や災害から人々を優しく守るために使うようになり、
 世界中の人々から親しみと敬意を込めて、こう呼ばれている。

​――「氷の守護者」と。

​ 臆病で、人見知りで、
 一人じゃ何も決められなかった俺だけど。
 この大切な仲間たちと一緒に、
 俺はこれからも、
 この新しい世界で前を向いて生きていく。