ひまわりが咲く場所で

大学への進学を控え、少しずつ慌ただしくなってきた冬の夕暮れ。


塾からの帰り道、人通りの少ない裏路地から、低く刺々しい笑い声と、小さく鼻をすする音が聞こえてきた。

「ねえ、何とか言ったらどうなの?」

「暗いんだよ、いつもさぁ」

数人の女子生徒が、一人の女の子を壁際に追い詰めているのが見えた。

地面にへたり込んだその子は、泥のついたカバンをきゅっと抱きしめ、肩を小刻みに震わせている。

放っておけなかった。

かつて心を閉ざし、暗闇の中に一人でうずくまっていた自分の姿が、その子に重なったからだ。

「……おい。何やってんだよ」

俺が低い声で割り込むと、女子生徒たちは一瞬驚いたようにこちらを振り返り、バツが悪そうに舌打ちをして、蜘蛛の子を散らすように去っていった。

静かになった路地に、冷たい風が吹き抜ける。

俺はゆっくりとその子の前にしゃがみ込み、目線を合わせた。
「大丈夫か? 怪我はない?」

手を差し伸べると、その子は怯えたように小さく肩を跳ね上げた。
けれど、ゆっくりと顔を上げたその子の瞳を見て、俺は息を呑んだ。
涙で濡れた頬。

恐怖で強張った唇を無理に引き上げ、心配をかけまいとするように、不器用にくしゃりと歪められた笑顔。

「……だ、大丈夫、です。ありがとうございます……っ」
泣きながら、無理をして笑っている。

その痛々しいほどの「泣き笑い」の表情に、あの日、病院のベッドの上で必死に俺を安心させようと笑っていた、莉緒の面影が強烈に重なった。

胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるように痛む。

あの時、俺は莉緒の無理な笑顔に救われ、そして彼女の本当の痛みに寄り添うことを学んだんだ。

「……無理に笑わなくていいよ」

俺は差し出した手をそのままに、今度は莉緒に教えてもらった、精一杯の優しい声で言った。

「しんどい時は、泣いてもいいんだ。誰も怒ったりしないから」

その子の瞳から、こらえきれなくなった大粒の涙が、ぽろぽろと零れ落ちていく。

張り詰めていた緊張の糸が切れたように泣きじゃくるその子の姿を、俺は静かに見守りながら、そっと寄り添い続けた。


莉緒。

お前が俺にくれた優しさは、こうして今も、誰かの暗闇を照らす力になっているよ。