ひまわりが咲く場所で

「あ、ごめんなさい! 盗み見るつもりじゃなくて……」
莉緒は慌てて一歩下がり、両手を振った。
「ペンケースが床に落ちてたから、机に置こうとしたら、その、写真が少し見えて……本当にわざとじゃないの」
必死に弁解する莉緒の言葉を、瑠唯は遮るようにして、素早く写真を引き出しの奥へと押し込んだ。その手が一瞬、小さく震えたのを莉緒は見逃さなかった。
「……別に。もういいから」
瑠唯はペンケースを掴むと、莉緒に背を向けて自分の席に座ってしまった。
いつもの莉緒なら、「怒らせちゃってごめんね」と笑顔でその場を上手く収めることができたはずだった。けれど、今の瑠唯の背中からは、他者を頑なに拒絶するような、ひどく深い孤独が伝わってきて、言葉が喉に詰まってしまう。
「……相葉くん」
「ほっといて」
瑠唯は鞄からノートを取り出し、莉緒のほうを一度も見ようとはしなかった。
昼休みの賑やかな教室の中で、二人の周りだけが、まるで昨日の雨宿りの時のように静まり返っている。莉緒は胸にちくりとした痛みを抱えたまま、それ以上何も言えず、自分の席へと戻るしかなかった。
(あの写真の人……誰だったんだろう)
瑠唯が大切そうに、でも隠すように持っていた、ひまわり畑の写真。
そこに写っていた瑠唯の屈託のない笑顔が、どうしても頭から離れなかった。今の彼が誰にも心を開かない理由が、あの写真の中にあるような気がして。
その日の放課後。
莉緒は友達からのカラオケの誘いを「今日はちょっと用事があって」と断り、一人で校門を出た。
いつものように誰にでもいい顔をして、話を合わせる元気が、どうしても出なかったのだ。
駅へと続く坂道を一人で歩いていると、少し先を歩く、見覚えのある制服の背中が見えた。
相葉瑠唯だった。
普段なら、女子に囲まれて帰るはずの彼が、今日は一人でぽつぽつと歩いている。
莉緒は声をかけるべきか迷い、少し距離を置いて彼の後ろを歩いた。
その時、私はふらっとした。
駅へと続く坂道を一人で歩いていると、少し先を歩く、見覚えのある制服の背中が見えた。
相葉瑠唯だった。
普段なら、女子に囲まれて帰るはずの彼が、今日は一人でぽつぽつと歩いている。
莉緒は声をかけるべきか迷い、少し距離を置いて彼の後ろを歩いた。
その時、急にふわりと頭が軽くなり、視界がぐらりと歪んだ。
「あ……」
莉緒は慌てて近くの電柱に手を突いた。激しい立ちくらみ。最近、階段を上るだけで妙に息が切れたり、体が重いと感じることが増えていた。ただの寝不足だと思っていたけれど、今回はなかなか視界のチカチカが収まらない。
そのままへなへなと座り込みそうになった莉緒の視界に、慌てた様子で振り返る瑠唯の姿が映った。
「川上……?」
瑠唯が怪訝そうな、そしてどこか焦ったような表情で、こちらへ駆け寄ってくる。