by瑠唯
莉緒の手を握りしめる俺の指先が、恐怖で細かく震えていた。
つい数日前まで、一緒にハンバーグを作って、不格好だなって笑い合っていたはずなのに。
俺の手の中にある莉緒の手は、驚くほど軽くて、まるで触れたら消えてしまいそうなほど冷たくなっている。
「莉緒、頼むから……目を開けてくれよ」
掠れた声で呼びかけても、莉緒は浅い呼吸を繰り返すだけで、その長い睫毛が動く気配はない。
枕元で小さく揺れるキャメル色の星のキーホルダーが、夕方の病室の光を反射して、静かにきらめいていた。
あのとき、莉緒は「全部の時間にありがとう」って言った。
まるで旅立ちの準備をすべて終えてしまったかのような、綺麗すぎる笑顔で。
どうしてあのとき、もっと強引にでも引き止めなかったんだろう。いや、引き止めてどうにかなる病気じゃないことなんて、自分が一番よく分かっている。
だけど、どうしても認めたくなかった。
莉緒の体から、少しずつ「生」の灯火が消えかけているこの現実を。
「……嫌だ。置いてくなよ、莉緒」
俺は莉緒の冷たい手を、両手で包み込んで、自分の体温を少しでも移そうと必死に擦り合わせた。
お姉ちゃんを亡くしたあの日の、冷たい雨の匂いが頭をよぎる。
でも、俺はもうあの頃の、ただ立ち尽くすことしかできなかった子供じゃない。
莉緒が俺を暗闇から引っ張り出してくれたんだ。今度は、俺が莉緒の手を絶対に離さない。
「莉緒。約束したろ。10個目のワガママ、まだ聞いてねえよ。だから……勝手に終わらせるな」
耳元で、静かに鳴り続ける心拍モニターの電子音だけが、張り詰めた空気の中に響いていた。

